東日本大震災:福島第1原発3号機も炉心溶融 専門家「非常に深刻」


◇「第2」1・2号機、蒸気放出検討

東日本大震災に被災した東京電力福島第1原発(福島県)について、枝野幸男官房長官は13日、1号機に続いて3号機でも炉心溶融が発生し、大量の水素の発生によって、1号機のように原子炉建屋(たてや)が爆発する可能性があると発表した。国の耐震基準をクリアし、「世界一安全」と関係者が胸を張ってきた原発だが、相次ぐ重大トラブルに、菅直人首相も「憂慮すべき状態が続く」と述べた。前代未聞の状況をどう脱却するのか解決の糸口は見えない。
東京電力は同午前9時すぎ、3号機の圧力容器内に水を入れ始めたが、給水ポンプに異常が発生。給水が止まって容器内の水位が大きく低下した。同午後1時12分、給水を海水に切り替えたものの、不安定な状況になった。同午後11時半現在も水位が完全には回復せず、燃料棒が十分冷却できない状態となっている可能性がある。
経済産業省原子力安全・保安院は「圧力容器内では水面から燃料棒が露出し、損傷した」と話し、炉心溶融しているとの見方を示した。原発の燃料棒が溶ける「炉心溶融」は、スリーマイル島原発事故(79年、米国)、チェルノブイリ原発爆発事故(86年、旧ソ連)でしか起きていない。それが日本で相次いで発生したことになる。
原子炉の燃料棒は通常、水中にあり、核分裂による熱が除かれる。だが、今回は原発の電源が落ちて水の循環が止まり、冷却できなくなった。その結果、水が沸騰して蒸発し水位が低下、燃料棒が水面から露出することになった。
東電によると、3号機は13日午後1~3時にかけて、4メートルある燃料棒のうち2メートル露出したという。露出して温度約700~800度に上がると、燃料棒を覆う被覆管のジルコニウムが水蒸気と反応して水素が発生し始める。この水素が、配管などから原子炉建屋に漏れ出し、建屋上部にたまっている可能性があるという。さらに温度が上がり、被覆管が燃えつきて核燃料があらわになるとセシウムなどが発生する。
吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉安全工学)は「高温になるほど反応が強い。長時間、長い燃料棒が水面から露出すると、大量の水素が発生することになり爆発の危険性が高まる。非常に深刻な状態だ」と話す。
最初に水を入れていた給水ポンプの故障を受け、東電は1号機に続いて、海水注入に踏み切った。海水を炉内に入れると、廃炉になる可能性が高い。
他に福島第1の2号機も水位が下がった。福島第2原発でも1号機、2号機、4号機で異常が確認されるなど、計6基が十分冷却できていない。
吉岡斉・九州大教授(科学技術史)は「まったく異常な事態だ。非常に危険な事故で、この先も何が起こるか分からない」と話す。
福島県と東京電力は13日、原子炉圧力容器内の水位を保つための機器が故障した東電福島第2原発1号機(楢葉町)について、修理が進まない場合は炉内の圧力が高まって爆発の危険があるため、14日午前3時にも弁を開けて、放射性物質を含んだ蒸気を外部に放出する方針を明らかにした。東電は復旧に努めているが、同様に同2号機も14日午前6時から蒸気の放出を検討している。

 ◇電源確保にもろさ ポンプ、冠水で動かず

原発は、想定以上の規模の地震に見舞われても、原子炉を安全に停止させ、放射性物質の漏出を防ぐ「多重防護」が巡らされている。ある部分が壊れても別の仕組みで補い、致命的な事故を防ぐ「フェールセーフ」という設計思想を反映している。例えば、核燃料は合金製の被覆管や頑丈な原子炉圧力容器など「五つの壁」で、外部への放射性物質の拡散を防ぐ。だが、今回は「少なくとも10メートルの高さ」(東電)という津波で電源機能が失われ、多重防護が働かず、炉内の冷却や放射性物質の封じ込めに失敗した。
原子炉は大地震発生時に、核分裂を抑える制御棒が自動的に挿入され、核分裂が継続する臨界状態から脱する。さらに緊急炉心冷却装置(ECCS)が働き大量の水を注入して冷やす。福島第1、第2原発では地震の揺れに対して、全10基が想定通り停止した。しかし、直後の津波は、各原子炉に2系統ずつある非常用発電機を動かすポンプなどの設備を冠水させ、注水に必要な電源が失われた。
ECCSのほかに2系統ある注水システムが使えなくなり、消火用配管からの注水も手間取った。冷却手段を失った結果、炉内の温度や圧力が上昇し、福島第1原発1号機では原子炉建屋内にたまった水素が酸素と反応して爆発。建屋上部の壁を吹き飛ばし、放射性物質を飛散させる重大な事態を招いた。
東電によると、非常用発電機は原子炉やタービンと同じ重要度で、もう少し標高の高い場所にあるが、ポンプなどは重要度がやや落ち、津波に冠水した。東電の小森明生常務は「あまりに想定外の高さだった。原発はかなりのタフネス(頑健さ)を持っていると思っていたが、電源の重要性を再度、しっかり考えなければならない。重い、厳しい教訓だと、率直に受け止めている」と唇をかむ。

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