インド南部の原発で事故、反対運動があらためて活発化



インド南部タミル・ナドゥ州の原子力発電所で14日に事故が発生し、反対運動が再び広がる気配を見せている。その結果、原発能力の大幅増強を目指す政府の計画がさらに遅れる可能性がある。
 この事故では定期メンテナンス中の作業員6人が負傷。原発周辺では15日、反対運動に数百人が参加した。
 参加者の話では、今回の事故で原発の安全性に対する住民の不安が高まったため、反対運動はこれからも続き、拡大する見通しだという。
 原子力エネルギー反対組織をまとめるPushparayan Victoriaさんは「悲惨な原発事故が起こるまで待たなくてはならないのか」と述べ、「みんなが現実に気づくまで、全国的な反対運動を続ける」と表明した。
 Pushparayanさんは反原発組織の仲間2人とともに、新興政党「庶民党(AAP)」から下院議員選挙に立候補。当選すれば、議会で反対活動を進める計画だ。
 反原発運動が再燃したことで、来月から新たな原発を稼働させる計画に一段の遅れが出そうだ。
 新原発と送電網との接続は昨年10月に完了しており、本来なら12月までに商業運転を開始する予定だった。
 反対運動や裁判などで、原発の建設には7年の遅れが発生している。
 国営のインド原子力発電公社(NPCIL)によると、今回の事故はメンテナンス中に熱湯が漏れ出たことが原因。同社は、爆発や放射能漏れは発生していないとしている。
 NPCILのNalinish Nagaich広報担当者は「われわれの原発は最も安全だ」と指摘。さらに、「インドは原発を必要としている。そうした反対運動は不必要だ」と付け加えた。
 インド政府は原発の発電能力を現在の4.7ギガワット(GW)から63GWに引き上げる方針。これは化石燃料への依存度を減らし、停電をなくす計画の中核をなすものだ。
 ニューデリーのシンクタンク、リバティ・インスティチュートのディレクター、Barun Mitra氏は、「この国にとって原子力は非常に重要だ。ただ、これが地域の反対を無視していいという意味にはならない」と発言。「反対運動はより大きな問題の一部であり、できるだけ早く個別に解決されるべきだ」と指摘した。

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