原子力 怖さ感じた


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自衛隊のヘリコプターで護衛艦いせに搬送された伊方町の住民=大洲市長浜町沖合の北西約2キロ地点(代表撮影)
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訓練でバス避難してきた人が、避難所に入る前に放射線量の検査を受けた=松前町の松前公園体育館

◇県広域訓練
  16日にあった県の原子力防災広域避難訓練には、前年度の4倍近い約9500人が参加した。実際に避難した住民からは、事故が起きた際の避難経路や手段などへの課題を指摘する声が聞かれた。 
◎想定 地震-放射性物質放出
  東京電力福島第一原発の事故を受け、四国電力伊方原発(伊方町)から半径10キロ圏内だった従来の訓練対象区域を初めて30キロ圏まで広げた。午前8時半、地震発生で伊方原発の全3基が同時に全交流電源を喪失、炉心を冷やすことができず、放射性物質が放出される恐れがあるという想定で始まった。
  住民避難に重点が置かれ、伊方原発から半径20キロ圏の伊方、八幡浜、大洲、西予の4市町の住民が実際に避難する訓練に参加。大型バスやヘリなどで大洲、西予両市の30キロ圏外の地点や松山、松前、内子の3市町に計5カ所設置された避難所や海上の船へ避難した。 
◎住民 避難経路や時間に不安
  原発から約32キロ離れた内子町の内子自治センターでは午前10時40分ごろ、予定よりも早く大洲市長浜町の住民らが到着。その後、西予市三瓶町の住民らも着き、体の表面の放射線量を調べるスクリーニングや除染、問診を次々と受けていた。
  避難してきた大洲市の農業小森孝さん(51)は、原発から約15キロの地点に住んでいるという。「今日はバスで、40分ぐらいで避難所まで着いた。でも、実際に地震が起きたら津波もあるかもしれない。海岸線を通ってきたが、そこが使えなければ細い山道しかない。避難道路は考えておかないと」 と話した。
  伊方町の佐田岬先端近くの三崎港では、地元住民と高校生、小中学生ら約70人が、呉海上自衛隊の輸送艦や宇和島海上保安部の巡視船に乗って海上へ避難した。
  輸送艦に乗った三崎中学校の井原正晴校長(55)は「住民全員が船で避難できるか、船が来るまでどのくらいかかるかなどの不安はあるが、こういう方法で逃げるという覚悟ができた」 。同校3年の村井一茂さん(15)は「こんな大規模な訓練は初めて。原子力の怖さを改めて感じた」 。
  巡視船に乗った伊方町大久の農業浜松為俊さん(61)は「こんな簡単でいいのか。お年寄りや障害のある人たちも参加させるべきだ」 と話した。
  また、県庁では各市町などと連絡を取り合う緊急時通信連絡訓練があった。災害対策本部では、約30人の職員が放射性物質の拡散状況を予測する緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測を活用し、避難の受け入れ自治体となる松山市や松前町と連絡をとるなどした。 
◎県 課題、防災計画に反映
  県は福島の事故を受け、昨夏に30キロ圏内の7市町などでつくる協議会を設置し、広域避難に関する対策を議論してきた。今回の訓練で課題を洗い出し、来月末までに原子力防災対策についての当面の方針をまとめる。さらに来年度以降、原子力災害についての地域防災計画に反映させる予定だ。
  訓練を視察した中村時広知事は、「ヘリや護衛艦を連携させて、いろんな教訓や経験につながった。避難された方に、スクリーニング、除染、治療のどういう作業が必要なのか検証する機会にもなった」 と話した。
◎学校 備えの大切さ児童学ぶ
  伊方原発から半径30キロ圏の小中学校など79校では、児童や生徒、教職員ら約7800人が参加して屋内退避の訓練があった。うち、16校では専門の講師が派遣され、原子力防災についての講習会を開いた。
  伊予市双海町串の下灘小学校は30キロ圏をわずかに越えるが下灘地区の一部が圏内に入るため訓練を実施。午前9時半すぎに防災行政無線が流れると、児童45人が校舎から体育館に歩いて退避した。
  避難後、財団法人「原子力安全技術センター」 (東京)の職員が講義。放射性物質が飛散した場合、衣服への付着に備えて着替えを持って避難することや、ハンカチを折り畳んで口元を押さえれば、吸い込む量が大幅に減ることなどを教えた。6年生の松田宣完(のぶ・ひろ)君(12)は「原発事故がこわいことが分かった。ハンカチで口を押さえるのは勉強になった」 と話した。 
◎伊方 社員130人が取り組む
  伊方原発(伊方町)でも午前8時半から訓練があった。昨年12月に完成した免震構造の総合事務所2階にある緊急時対策所に対策本部を設置。通報連絡や電源復旧、水源確保、放射線モニタリング、汚染患者の搬送訓練などに社員ら計約130人が取り組んだ。
  1~3号機とも淡水タンクが被災した想定でタンクヤードと呼ばれる広場であった水源確保訓練では1、2号機の放水口の海水を水源に、復水タンクや補助給水タンクにホースをつなぎ海水を送る訓練をした。
  伊方原発の長尾浩司広報課長(51)は「伊方原発の安全対策はしっかりできていることを示し、住民の皆さんに安心してもらえるようにしたい」 と話した。 

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