もんじゅ、廃炉条件に「5年運転」案


トラブル続きで運転停止中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)をめぐり、運営する独立行政法人日本原子力研究開発機構(原子力機構)や電力業界内で、5年運転したら廃炉にすることを条件に運転再開を目指す計画が浮上している。複数の関係者が明らかにした。廃炉までの期限を設け、世論の抵抗を和らげる狙いがある。
 政府は福島第1原発事故を受け、今夏をめどにもんじゅを含む核燃料サイクルの是非を決定する。5年運転を条件にした廃炉計画は、事実上の延命策と変わりがなく、国民の理解を得られるかどうかは不透明だ。
 関係者によると、原子力機構などは、もんじゅの廃炉費用を試算した上で、5年間で発電を終える場合の事業費などを盛り込んだ新たな開発計画を近く策定する。これを基に、存続を働き掛けるとみられる。
 もんじゅは1994年4月に運転を開始したが翌95年12月に配管を循環する液体ナトリウムが漏れる事故で14年半停止した。2010年5月に運転を再開。直後の点検作業中、燃料交換用機器が原子炉内に落下し、現在も止まっている。
 94年以降、連続して核分裂反応が起きる「臨界」状態だったのは、わずか250日間にとどまっている。
 もんじゅの開発には、既に1兆円を超える税金が投入されている。原子力関係者の間では「このまま廃炉になれば巨額な開発費が無駄になる」との懸念が出ている。
 福島第1原発の事故で運転再開が一段と難しくなる中、最低限の運転経験を積み、将来の再開に備えて技術を温存した方が得策との意見が強まっていた。
 廃炉時期を明確にすることで、停止していても維持管理のため一日で5千万円以上かかる無駄遣い批判をかわす狙いもある。
 5年間の運転期間中は、プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料の耐久性などの実験データを得るとみられる。
 原子力機構は同じMOXを燃料とし、既に解体中の新型転換炉「ふげん」(敦賀市)を参考に、もんじゅの廃炉費用を試算する。ふげんでは750億円を見込んでいるが、もんじゅは構造が複雑なため費用はさらに膨らむと予想されている。
 【高速増殖炉】 使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出す。プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)を使う核燃料サイクルの中核施設。燃やした以上のプルトニウムを取り出すことができ「夢の原子炉」と呼ばれる。通常の軽水炉原発は原子炉の冷却などに水を使うが、もんじゅは空気に触れると爆発する液体ナトリウムを使うため構造が複雑で、制御が難しい。もんじゅは実験炉「常陽」に次ぐ研究段階の原型炉。実証炉を経て、初めて商業化する。

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