日本原子力研究開発機構部会(第32回) 議事録


1.日時

平成23年6月14日(火曜日)13時~17時

2.場所

文部科学省東館7F1会議室

3.議題

  1. 独立行政法人日本原子力研究開発機構の平成22年度に係る業務の実績に関する評価について
  2. その他

4.出席者

委員

(文部科学省委員)田中知、玉川洋一、津山雅樹、富岡義博、鳥井弘之、中西友子、宮内忍、山田弘司(五十音順、敬称略)
(経済産業省委員)浅田浄江、内山洋司、津山雅樹、富岡義博(五十音順、敬称略)
なお、津山雅樹委員、富岡義博委員は、両省の委員を兼任

文部科学省

(文部科学省)篠崎原子力課長、川口原子力課核燃料リサイクル室長、池田原子力課課長補佐
(経済産業省)舟木原子力政策課企画官
(日本原子力研究開発機構)鈴木理事長、辻倉副理事長、伊藤理事、岡田理事、片山理事、戸谷理事、野村理事、三代理事、横溝理事、牛嶋監事、山根監事

5.議事録

本日の部会については、「科学技術・学術分科会運営規則」等に基づき、非公開とすることとなった。

(1) 平成22年度の業務実績評価について
鈴木理事長より、資料1-2に基づき、平成22年度における原子力機構業務の総括と今後の取り組みについて説明が行われた。議論は以下の通り。
【中西委員】
 今回の震災を受けまして、今までどおり中期目標、中期計画の評価をやっていいのだろうかと疑問、虚しさを覚えました。ただ、理事長が今までの反省と総括も含めて、これからの取り組みを考えたいとおっしゃったので、その方向で見させていただきました。
 JAEAは、理事長がおっしゃったように、すべての原子力のことについて行っているところだと思います。ですから、何も原子力は原発だけではなくて、ほかの分野も広いので、もちろんプロジェクト、決めた方向性のフィールドがどうなったかというのも非常に大切なのですが、やはり今こそ基礎研究をしっかり充実してほしいと思います。
 この中を見させていただきますと、基盤・基礎研究という言葉が全然出てこないです。思いもしなかったことに対処するためには、やっぱり基礎研究、基盤研究というのは非常に役立つと思います。
 今、既にあってうまく表に出てこないだけかもしれませんが、これからに備えるには、安全研究ももちろん大切ですが、そのほかの原子力関連の基礎・基盤研究をしっかり支えていただきたい。先端基礎だけでなくて、広く一般のことをし、学術的な面から原子力を語れるのが、唯一JAEAだと思います。ですから、もし違っていたら言い返すこともできますし、ぜひプロジェクトに合わせて、工学だけでなくて理学面の基盤研究を支えていただきたいと思いました。
【宮内委員】
 3月11日以前と以降というのが、この年度評価の中に含まれているわけです。年度評価は、少なくとも達成度評価ですので、事業計画に対してどういう状況であるのかを、この評価委員会としては粛々と進めなければならない。3月11日まではほとんど達成していて、しかし11日以降、劇的に変わったものがあるといった場合に、もう計画は変えられませんので、既にある計画との関係で達成度を評価せざるを得ない。その場合に、非常に気の毒な状況になる部分が出てくるかどうかということを、今、お話を伺っている中で明らかには理解できませんでした。
 いずれにせよ、そういう問題と、今年度における我々が評価を行っていく上でのポイントの問題と、それから今後、中期計画も変えなければいけないのかどうかという問題は、整理をして切り離した上で、この後の作業をわかるようにお進めいただければ、大変ありがたいと思っています。3月11日以降の事柄について、特別に扱うということを付言しなければならない事態が、この部会においてはあろうかと思いますが、その辺のところをどういうふうに整理されているのか、役所も含めて、その方向性についてお話しいただければありがたいと思います。
【池田課長補佐】
 現時点で考えていることですが、震災を踏まえて、ある程度、そのままやれる部分とやれない部分が出てくると思います。それに関しては、やはり必要とあらば、中期目標、中期計画を変えるということは当然必要になってくると思います。そういう事態が発生したときに、また個々検討した上で、適切な目標設定、計画の設定に書いていけばいいのではないかと考えています。
【宮内委員】
 最終的に役員の退職金の評価とかに、ここで形式的に評価をつけられたものが、自動的に反映されていくという形になってしまって、震災によるディスアドバンテージを斟酌できないものかというのを、私は、他のところでもコメントしていますが、積極的にそういう話に、賛意を表してくれる方はいませんので、おかしいのではないかと個人的には思っています。
 それが、今回、こちらで実態的に被害はありましたが、その評価に影響を及ぼすようなことがないというのであれば、何もそんなに先走って心配する必要はないのかもわからないです。もしあるとすると、そこをどう取り扱うのか。もうあくまでも粛々と達成度評価を行っていく、その上で、こういう事態がありこういうことがあるということさえ付言しておけば、あとは特に問題なくいくものかについて、お考えをお聞かせいただいたほうがよいという気がしました。
【鳥井部会長】
 今の話の逆の話として、ITERにしてもJ-PARCにしても大型施設をつくったわけですが、その耐震の設計はどうなっていたのか、あの地震が来るなら壊れて当たり前の設計がされていたのか、それともあれで壊れてしまったら、国民との約束は果たせているといえたのか。例えば、去年、おととしの事業がほんとうに正しかったのかを、1回は考えないといけなくて、震災があったからできなかったのはとても気の毒だからここは配慮しましょう、という話と逆の話として、約束してきたことが震災でできなくなっているわけです。これは、機構としてはどうお考えなのか。
【内山部会長】
 今のは、それぞれの項目別に判断することが必要なような気がします。あまりにもたくさんの項目があるものですから。ここで我々の評価すること全体を述べるのは難しいような気が、私はしています。
 そういう点から言うと、個別評価のところでそれを具体的に述べてもらったらどうかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
【鳥井部会長】
 私としては、もちろん個別評価のところでやらなくてはいけないと思いますが、どういう気持ちでこの委員会に臨んでいるのかということを、少し教えていただきたいという感じです。人が死ななかったから安全性に問題はなかったというような評価も可能かと思いますし、機能を喪失したから、そうした場合どうなのかというような、全体としてどういうスタンスなのかという話をお聞かせいただきたい。
【鈴木理事長】
 まず、その耐震にかかわる設計といいますか、特に今の場合で言うと、J-PARCと核融合関係の那珂研究所の施設が、そういう意味では特徴的であると思います。
 今、鳥井部会長がご指摘の点は、これまで何回か議論がございました。利用者側であるとか、そういうところとの議論に私も参加したことがございます。
 これについては、必要に応じて、この評価委員会の場でもご指摘いただければと思いますが、私の感じているところをあえて最初に申し上げさせていただければ、御承知のように、原子力施設の耐震安全性というのは、安全性の観点からの耐震設計であるとか、耐震性にかかわるいろいろな対策を講じておくことということになっておりまして、特に発電用原子炉施設の場合で言えば、その重要度分類まで、安全性の観点からできております。
 当然、J-PARCの施設だとか、あるいは核融合関連の施設も、安全にかかわる観点からの耐震設計というものはなされているわけですが、私の理解は、耐震安全性というのは原子力の安全にかかわる耐震安全性ですので、発電用原子炉などと比べますと、その耐震設計はそんなに立派なものではないことは明らかであります。
 そういう中で、やはり私が感じますのは、いわゆる財産保護の観点でどこまで耐震性を持たせるかということ、実は、これはエンジニアリングの問題のなかで、整理中だと思っています。これは、当然のことながら、どのくらいの建設費用をかけてもいいのかというようなことと直接的につながっていますので、お国のお金を使っている以上、恐らくエンジニアリングの問題とはいっても、勝手に決めることはできないという世界があるのではないかと思っています。
 端的な例は、柏崎刈羽で中越沖地震が起きたときに変圧器が火災を起こしました。これは耐震安全性の観点から言うと、重要度が低いので、耐震設計は十分になされていなくてもいい設備でありました。そのために、実際に損壊して火災まで発生いたしました。
 しかし、その後、発電用原子炉施設の耐震安全性に係るいろいろな議論をしていく過程で、「変圧器のようなものであっても、十分な支持構造を持たせること」というような記述を指針要領に入れることになりました。
 これは、いわゆる耐震安全性というよりは、やはり、そういうことが起きた場合の社会的な影響であるとか、あるいは財産保護の観点が大きかったと思います。つまり、変圧器が地震で壊れますと、あれだけのものはなかなか現地では修復できなくて、工場に持ち帰らなきゃいけない。そのために、長期にわたって発電所をとめなきゃいけないというような事態が発生いたしました。ですから、これは安全性とは直接かかわりませんが、しかし実際は国民生活に大変大きな影響を与える。こういうものについては、それなりの考慮があっていいというような議論がございました。
 今後、J-PARCだとか核融合関係の那珂研究所にございます施設を、修復しないといけないんですが、この修復する過程で、また今度、同じような地震が来たら壊れるのかということについては、よく考えて、可能な範囲で補強してほしいということを、これは個人的意見として、今、言っているところであります。
 そこのところ、なかなか明確なお答えはお示しできないんですが、私としては、そのように考えているところでございます。
 それから、震災の影響と、今回の評価についてのご意見でございましたが、これについて、私どもが自己評価するときにも、ちょっと同じような議論をいたしました。
 そこでどういう整理をしたかと申しますと、冒頭に申し上げましたように、平成22年度に関する限りは、カレンダー的な、365日分の何日だということを言えば、震災以降というのは、20日ぐらいですので、大きな影響を与えるものではないということが一つございます。したがって、22年度の業務実績は、そういう観点で、一応、震災とは切り離して評価しようということにしました。
 しかしながら、機構で行っている活動が、やはり社会的に役に立つものでなければいけないという尺度といいますか、見方があると思っています。そういう意味で言えば、ああいう震災が起きたときにこそ、これまでの事業の内容、成果が生きるべきだという見方もあるだろうということで、そういう意味で言いますと、さっきちょっと中西先生が、私の説明で基礎・基盤研究のことを触れていないというご指摘がありました。これは、私の資料がちょっとそういう意味では不十分でありまして、こちらの報告書のほうには載っております。大変申し訳ありません。
 なぜそんなことを申し上げましたかというと、基礎工学の部門で研究活動をしている人たちが、今度の震災のときは、すぐにいろいろな解析をしたり、調べたりして、3月11日直後から、かなりの活動をしております。
 これはまさに、中西先生がおっしゃるような意味で、そういう活動といいますか基礎研究をしていたために、それが非常時の対応に役に立ったということだと私どもも思っています。この評価には、あまり入っていないかもしれませんが、そういう観点も含め、それなりに考えたつもりでございます。
 22年度の業務実績はそういうことだと割り切っておりますが、それでは23年度をどうするのかということにどうしても関連があるわけでございます。その部分については、内山部会長からもお尋ねがございましたが、私としては、今後、国のほうとも相談し、また今回の評価結果も参考にさせていただいて、23年度については、また新たな視点をどうしても入れなきゃいけないと思っております。
 最後に、この評価結果が役員の業績評価につながるとのご指摘がございました。そういう中で、他動的というのか、外的な要因で影響を受けたものが、役員の仕事の評価につながるのはいかがなものかという、コメントをいただきました。震災の対応については、我々、全員必死で取り組んでいるところですので、できれば高いご評価をいただけるとありがたいと思います。
 それよりは、原子力というのは社会的に大変大きな影響を与えるわけですし、したがって、またそれなりに関心も高い分野だと思っております。そういう分野で仕事をする以上、いろいろな社会的な評価といいますか、私自身はよく使う言葉ですが、社会的にもまれることによって、原子力のいろいろな研究開発というのは進んでいくんだというふうに思っておりますので、今度の震災も、これは大きな試練だと考え、これを乗り越えることが、機構が果たしていくべきある種の役割になるんじゃないかと思っております。
 そういうことで、評価についてのご議論を進めていただけたら大変ありがたいと思っております。
【内山部会長】
 本日、提示されている評価の中身を見ますと、やはり22年度の実績が中心に書かれていますので、その中で、私は、事業の継続性ということも質問事項に入れて各委員が評価するということでいかがかなと思います。
 震災前に中期目標が策定されております。しかし、事業というのは迅速に社会の変化に対応するということが同時に強く求められておりまして、こういう大きな社会変化が起きた中で、やはりこういう中期目標は、今後、どういうふうに考えられるのか、それについて、ある程度、機構側の考え方を、できればこの期間中に提示いただければなというふうに思っております。きょうすぐには回答できないと思いますので、何らかの形でご回答いただければと考えておりますが、いかがでしょうか。
【鈴木理事長】
 内山部会長のお話、正確に理解したかどうかわからないんですけど、私としては、先ほど申し上げたようなところが今の我々としての考え方です。しかし、今後、いろいろな議論が多分なされると思っておりまして、そういう中で、当然、中期目標、中期計画に波及する議論が出てくるのではないかと思っております。
 私どもは、あくまでも決められた中期目標に従い中期計画を立て、その各年度の計画を立てるということを基本にしたいということで、23年度について、何か新たな方向性を自分たちだけでお示しするということは、やや難しいかなと考えています。
 私が先ほど申し上げたような意味では、それなりの方向性は出さないといけないと思っておりますし、出していきたいと思っておりますが、そのことをこういう場で、もうこういうふうに決めましたというような形では、すぐにお示しすることは少ししにくいんじゃないかと思っております。
【鳥井部会長】
 別にきょうお答えいただく必要もないと思うんですが、もう23年度は始まっていますので、23年度以降のことについてどう考えていくのかという話は、どこかの折に少しお知らせいただけたらというふうに思います。
【池田課長補佐】
 中期目標になりますと、むしろ文部科学省のほうが主になりますので、どちらかといいますと、やはり今後の震災の対応とか、今後、国民的な議論が起こると思いますが、そういった流れの中で、そもそも原子力政策はどうなるのかといったところを見ながら、むしろ政府側から、ある程度、その方向性を示した上でないと、やはり原子力機構のほうも、はっきりとこうするとは申し上げにくいところがあるかと思います。
 むしろ、この流れの中で、また何がしか政府部内で動きがありましたら、この評価のタイミングあるいはそれ以降の適宜、ご報告をさせていただきまして、それを踏まえて中期目標の変更が必要ということとなりましたら、またご審議いただくという形でいかがでしょうか。
【鳥井部会長】
 中期目標を決めるときにも、何が必要なもので、現場の方のことも知らないと中期目標について意見も言いにくいと思って、いつかはそういう話をぜひ聞かせてほしいと、こう申し上げたという次第です。手順としてはおっしゃるとおりで、事務局の言われるとおりです。
【内山部会長】
 まさに、今、事務局のおっしゃる流れだと思いますが、やはり変化に迅速に対応するというのは非常に大事なことですので、その辺は重々ご留意願いたいと思います。
【鳥井部会長】
 理事長に1つだけ申し上げたいんですが、やっぱり原子力機構の施設は国民の財産なんです。国民の夢を担っていたものなんです。ですから、壊れてしまいましたというだけでは、ちょっと寂しいような気もします、その辺、どう考えていくのかというのは、もう少し具体的に考えていただく必要があるかなという気はしております。

辻倉副理事長より、資料1-3に基づき、平成22年度業務実績の自己評価の概要について説明が行われた。議論は以下の通り。
【内山部会長】
 まず最初に評価に当たりまして、今年度から、資料1-1の評価フォーマットに沿って評価するということになっていまして、この場合、インプット指標というのが新たな項目になっていますが、今、ご説明いただいた内容からは、インプット指標が一体何なのかというのがいま一つわからなかったですが、これについては、今後、どういうふうに我々に提示していただけるんでしょうか。
 それから、国民の目線から言いますと、「もんじゅ」もFaCTも両方とも高速増殖炉であるのに、何で片方がBで片方はSなのか。「もんじゅ」に対して、FBRを開発していくという視点から中で協力関係というのはあったんだろうか。そういうことに対する回答が求められます。
【辻倉副理事長】
 まず1番目のインプットデータ、今回、評価シート等のフォーマットについては、こういう形とするようご指定をいただきました。インプットデータについては、個々のアイテムのご審議のときに必要なデータをお示し、それについてご説明できるように進めさせていただきたいと思います。
 それから、FaCTはSで「もんじゅ」がBなのはなぜか、関連する項目なのになぜ大きく自己評価の結果が異なるのか、とのご指摘でございますが、冒頭申し上げましたように、私どもの業績評価は、それぞれの業務について、中期計画に基づき、さらに年度計画もふまえて、その達成状況がどうだったかのとの観点で行っております。
 それぞれの業務につきまして、評価項目毎に、そういう観点で厳格に評価をいたしましたが、「もんじゅ」とFaCTの間には、当然、密接な関係がございます。例えば「もんじゅ」の一連の開発につきまして、FaCTの開発研究者も同じFBRの研究開発者でございますから、相互の意見交換なり、場合によっては、「もんじゅ」に関連する業務の一部について、次世代高速炉の研究開発の知見に基づいた形での提案をするといったようなことは、当然、実施してございます。
また、先ほど「もんじゅ」のゼロ出力試験の成果等について、若干、ご報告をさせていただきました。この試験に関連し、原子炉の評価解析コードという形で、それの実証性を検証するものもございますけれども、こういったものは、当然、次世代高速炉の研究開発の中に折り込んでまいります。また原子炉関係だけではなくて、例えば今回の炉内中継装置等のトラブルがございましたが、これに関連いたします一連の修復のための補修技術、こういったようなものにつきましても、「もんじゅ」の現場で、メーカーも含めて一連の体系をつくってまいりました。こういったようなものは、当然、次世代高速炉の開発のベースになるものでございますから、機構内で情報共有を十分に行っております。
 また、情報共有するだけではなくて、こういうことを開発する段階で、「もんじゅ」の技術者と、次世代高速炉の技術者が一堂に会して、どのような対策がとれるのかといったようなことにつきましても、共同の場でそれぞれ知恵を出し合って、対策について議論しております。
 いろいろな形での協力関係がありますけれども、現在、進行しております現場での協力関係、あるいは「もんじゅ」で出てまいりました研究成果を、レポートの形でわたすなど、もろもろの形で、当然ではありますが、連携をとっております。
【宮内委員】
 「3月11日までの」という前提で話をされている例、私は、避けたほうがよいと思います。というのは、事業型の法人の場合には、3月11日以降、わずか20日ではありますが、企業で目標を達成できなかったところが大変多くあるわけです。そういう意味では、事業型の独法であれば、残念ながら達成できない、例えば「もんじゅ」も、これは事態は違っているんですが、炉心内の装置が落ちたというのが例えば3月11日起きたんだとすると、やっぱりそのことをベースにしてB評価せざるを得ないということについては、私は変わらないんだと思うんです。ですから、「11日までの」という前提条件は、ちょっと世間に対して説明がつかないだろう。
 もう一つ、これはどうなのかなというのが、「放射性廃棄物の処理及び処分並びに原子力施設の廃止措置に関する計画」ですが、S評価になっていて赫赫たる戦果が上がっておりますとなっています。では、今回の震災に対して、これがどのぐらいの力を発揮し得るのかという、法人の評価としてそれでいいのかわからないけれども、社会的に見ていったときに、世の中の思いとの関係でいくと、赫赫たる戦果は上がっている、でも、実際に起きている事柄に対して、どのぐらいの効果ないしは成果として社会的に言えるんだろうかという問題にぶつかってしまう気がします。その辺のところは、これによって変えてはいけないという話ではないのかもしれませんが、その辺、斟酌する余地があるのかないのかという感じがいたしました。
【辻倉副理事長】
 3月11日に大震災が起こって、それ以降、機構としては、中期計画に基づく活動に加えて、震災対応についても、支援も含め、当然、その活動を行っているわけですけれども、震災対応については、この自己評価の中で申し上げているわけではなくて、現在の中期計画に沿います部分について、23年3月末までの進捗状況を中心に自己評価させていただきました。
 それから、機構の活動から出てきた成果が、震災に対して、今後、どのような形で有効に働いていくのかということについて、まず実務的な部分につきましては、例えば「ふげん」あるいは廃止措置のグループは、廃棄物の処理・処分に関する技術を持っております。また、損傷した建屋あるいは機器の切断ですとか、こういう技術も持っております。そういう技術が、今後の支援にどのように役に立っていくのかということについての提案活動など、3月11日以降の支援活動として、現在、活発に行っているところです。
 そのことと、今、ここで申しております22年度の業務の実績評価ということとは、これは自己評価では仕分けをして、ここではあくまでも現在の中期計画に基づく成果の部分を中心に述べさせていただいております。
 冒頭、理事長が、22年度の業務実績についてご報告をさせていただいたときにも、ご議論がございましたが、中期計画に対して、今回の震災をどのようにとらえて、その中で、私どもが実際に支援機関として活動している、この支援活動部分についての評価、それから、私どものインフラの損害がどのようなもので、その復旧活動の部分についての評価、これらは当然、議論がなされるだろうと思います。先ほど文科省のほうから方向性を示していただきましたような流れの中で対応させていただければと思います。
【田中委員】
 Sになる場合には、そこの部分の方々が結構元気になっていいかなと思うんですが、機構の中で、Sを考えるときの基本的考え方について、教えていただきたいと思います。特に放射性廃棄物、先端原子力科学研究と中身は随分と異なっていると思うんですが、さまざまな異なる分野がある中で、Sを考えるときの考え方みたいなものがありましたら、教えていただきたいと思います。
【辻倉副理事長】
 機構の中に、自己評価委員会という委員会がございます。まず、各業務分野ごとに、それぞれの担当組織が自らの業績評価を行いまして、それについて、自己評価委員会で議論をして評点を含めた機構としての自己評価結果のとりまとめを行いました。自己評価の基準ですが、中期計画、年度計画を踏まえつつ、これらの計画に対して、内容的にも、あるいはスケジュール的にも、どうであったかということの観点から私どもなりに評価をいたしました。
 特にすぐれた実績とは何か、についての物差しですが、機構の中の研究開発分野は、非常に多岐にわたっておりますので、業務によって違ってきます。
 先ほどの、ノーベル賞に肉薄するかもしれないといったような現象の発見から、たとえば、レンガの加工といったようなものまで、先端的なところから、実務に及ぶ部分まで業務として持っております。
 レンガ加工につきましては、多岐にわたる多くの方々にご納得いただけるような活動をして、それをスケジュール内に、たしか140万個でしたが、それだけのレンガをきちんと、納得をいただける形で処理をするめどをつけたということは、業務の遂行という意味では、いわゆるすぐれた結果を出したというように考えます。
 したがって、物差しは、1つだけということではなくて、各業務に即して、その難しさ、あるいはその成果の大きさ、そういうものをそれぞれの状況等を踏まえ、判断をさせていただきました。
【鳥井部会長】
 例えばレンガの話は、これを始めたときには、とても全部は配布できないだろうとお考えになっていたということですか。つまり、Sというのは、かなり予想を上回って成果が出ている場合にSとなります。予想通りいったときはAという評価になっています。ですから、例えばレンガなんかつくれないに決まっていると思っていたのか、それとも全部配布なんてとても不可能だと思っていたのに事業を始められたのか、その辺はいかがでしょう。
【辻倉副理事長】
 これは、自治体との協定で社会に対する約束事をしたわけですので、当初、協定を結ぶときに、不可能であるというような前提で協定を結んだものでは決してありません。
 ただ、それを達成するためには、例えばレンガの製造プロセスですとか、市販されているような通常の原材料からつくっていくわけではありませんから、当然、その中に開発要素も入ってきて、非常に困難を伴うだろうというような予測は当然ございました。
 その困難を伴うだろうという部分、これは製造プロセスもそうですし、仕上げたものにつきましても、当然、レンガを購入していただく相手のあることでございます。それを一つずつ、地方自治体のご協力、あるいは個人個人のレンガを買っていただいた方々も含めまして、困難であるけれども実行可能であるという当初、想定していたプロセスを、その困難さを乗り越えて達成できた。この部分を、私どもとしてはSと評価させていただきました。
【鳥井部会長】
 事業をやるときに、何ごとも困難はつきまとっているものです。ですから、当然、その困難があることは予想されていたわけです。となると、Aでいいんではないですか。この事業について物を言っているわけではなくて、そのSの考え方について話をしています。
【辻倉副理事長】
 例えば似たような形で、類似のものが業界にあったとしますと、それのベンチマーキングで、それぞれまた高い目標を設定して、それをこなしていくという、こういうパスもあったかと思いますが、少なくとも今回のこのようなプロジェクトというのは、以前どこにもなかった。自分たちで計画を立てて、1つのアイデアをつくって、社会にもお約束をしながら、それを実行した。このあたりを、私どもは自己評価として高く評価をさせていただいたというところです。
【鳥井部会長】
 少なくとも、研究開発機関なのですから、当然のように困難さはあるし、前人未到であるはずです。あまりそこを強調されると、企業がやるのと同じ位置づけになってしまうかもしれないという気がします。研究開発機関であるということを主張しないといけないと思うのですが、そこは、どういうふうに勘案されていますでしょうか。
【内山部会長】
 恐らく鳥井部会長がわからないのは、我々も同じところがありまして、S評価の基準は、計画の早期達成と、計画どおりだが質の高い成果あるいはステークホルダーへの貢献やアウトカム創出、それが、具体的にどういうものかが記載されていないものですから、どう判断していいのか、混乱しているわけです。そこを、もう少し詳しく説明いただけないですか。例えば、実際に事業をやって、総売り上げがどれだけだったのか、結果として、事業として採算が合ったのか、それも1つの評価基準ですから、その辺も含めてお願いします。
【辻倉副理事長】
 レンガそのものの個々の具体的な数値ですとか、それは個々の業務実績についてのご審議の際に、ご説明をさせていただければと思います。
 ただ、計画どおり、これは私どもが掲げましたスケジュール、それを期日の範囲内で早期に達成したということは事実でございます。先端技術ではございませんけれども、裁判で1つの方向性が明確に出されましたように、人形峠の掘削土につきましては、たくさんのステークホルダー、1つの価値観ではなくて、相対する価値観を持った方がおられます。そういう方々が、それぞれに、これならよかったねというところで納得をいただけたというのは、ある意味で質の高い成果と、私どもでは考えたいと思っております。
 また、ステークホルダーへの貢献やアウトカムの創出ということですけれども、今回、こういうことがどういう形で1つのベンチマーキングになるかというのは、レンガをつくり出すということのプロセスもそうですけれども、例えば将来このようなことがありましたときに、いわゆる掘削土を処理するという一つのパスを見つけたという、このことそのものも、いわゆるアウトカムの創出というようにとらまえていいんだろうと思います。
 将来、同じようなことがあったときに、レンガになるのか、違う方法になるのかわかりませんが、そういう土の処理をするということについて、いろいろな解決法のある中で、1つの方向性を出せたと思います。
 そのようなこと、もろもろのことが、このS評価の中に私どもとしての思いがございます。個別の項目毎のご審議のときには、もう少し細かくきちんとご説明させていただきます。
【鳥井部会長】
 こういう仕事をされている方に、どこかでS評価をつけたいというのは私も思うのですが、一方で、例えばサイクルの実用化の研究の話を考えても、本来、きちんと実用化しなかったら、評価すべき話じゃないです。計画どおりにやったからといって、ほんとうは少しも偉いわけではなくて、これで世の中がよくなっていくから偉いのです。けれども、年度評価だからしようがないから、計画どおりやったことを評価しましょうと言ってきたわけです。
 でも、庶民の気持ちから言うと、ちゃんと役に立ってくれるから評価に値するんだというのが気持ちです。
 ですから、気持ちはお互いよくわかるのですが、あまり気持ちが入ってしまうと後で説明が苦しくなってしまうところがあって、それぞれ曖昧さがあるような気がするのですが、いかがでございましょうか。
【辻倉副理事長】
 FaCTにつきましても、もともと物差しを、長期計画でということを申し上げました。個別の技術についてももう少しご説明したほうがいいのかもしれませんが、例えばフェーズ1で計画をいたしました、経済性があって、安全性があって、機能も発揮できるような機器開発の単体はきちんとできたわけでございます。そこまでが、中期計画において求められているところです。
 今回、私どもはここでさらに踏み込んで、機器を組込んだシステム全体の概念構築まで行いました。この概念構築をするということは、例えば経済性ですとか、システムの運用性というようなことが、その次のフェーズ2のアウトプットとして必要になってくるわけですけれども、それに対する入口のところで、かなり先行きの見通しを出すことができた。この部分につきまして、今回の計画を超えた成果を得られたというように、評価をさせていただいたところです。
【鳥井部会長】
 こちらのSがおかしいと言っているわけではなくて、物の判断として整合性がとれていないのではないでしょうかと申し上げているわけであります。例えば、レンガのほうは大体計画どおりできた、社会に約束したとおりできましたというのがベースなのです。FaCTのほうは、約束した以上にできたからSなのです。この評価というのは、中期計画を超えるとSなのです。年度計画と言うべきかもしれませんが。そうすると、FaCTのほうは確かに説得力がありますけれど、レンガのほうは、今のご説明では説得力がないのではないでしょうかと申し上げているわけです。
【辻倉副理事長】
 確かに、レンガの処理につきましては、計画どおりであり、当初、お約束したことを実行したというものであり、この部分は、おっしゃるとおり計画どおりという範囲に入っているんだろうと思います。
 私どもがぜひご理解いただきたい、訴えたい部分は、先ほど申しましたように、社会の多くのステークホルダーがおられるという状況の中で、一つの新しいプロセスの開発といったようなこととしてとらまえていただけるのではないのかなと考えております。関係者との円滑な連携を図り、技術課題の克服に努め、長年の課題を解決した。これは、確かにお約束したことを達成したことでございますけれども、それに加えて、多くのステークホルダーに対して、こういうようなものに対して理解を得るプロセスを、一つ達成したといったようなことだろうと思います。
【鳥井部会長】
 例えば一般の人から考えると、せっかくこういうものでレンガをつくれたので、今福島でいろいろなことが起こっていて大変困るでしょう、そこに、具体的にこういうふうに役に立つのではないかというような表現があると、確かに約束したことより前へ進んだという感じはするのですが。
【内山部会長】
 福島の汚染土壌をレンガにするということですか。
【鳥井部会長】
 そういうことではないですが、今、起こっていることに対して、これは役に立つというようなことが少し言えると、なるほどというふうに思えるところがあるということです。
【辻倉副理事長】
 各論の段階で、今、ご指摘いただいていますような点も踏まえて、ご説明の仕方を工夫させていただければと思います。
 先ほど冒頭にありましたように、3.11を踏まえまして、その後の活動は、もちろんこのレンガもですし、廃止措置もそうですし、機構としては一連の活動をしてございます。
 その中で、どの技術がどうというふうに今後、具体的に展開していくのはこれからの検討によりますけれども、そういうところに、こういうものがリンクしていくのは間違いございませんし、そのほかのものについても具体的な提案をさせていただいています。今回は、現行の中期計画、22年度の年度計画に基づく評価ということで、ある程度、割り切って書かせていただいていますので、福島支援など、今後の展開への記載等、あるいはご説明の仕方につきましては、ぜひ工夫をさせていただきたいと思います。
【富岡委員】
 「もんじゅ」のB評価のところなのですが、屋外の排気ダクトの交換が計画どおり実行できなかったということがB評価の理由だとと思うのですが、屋外の排気ダクトの交換工事がおくれたということが、どれぐらい悪いことなのかはこれだけではわからないのです。
 ただ申し上げたいのは、現場は現物を相手にしているという特有の難しさがあって、紙の上の研究とは違いますし、東京から見ている見方とも違って、現場は、すごく努力をして難しいことをやっているということはあると思うのです。
 スケジュールがおくれたということでB評価というのは謙虚で厳格で、それはそれでそういう自己評価なのかなというふうに思いますが、現場では、試運転を再開したという成果も挙げているわけですし、ぜひ、こういったB評価にすることで現場の士気が落ちないように、ご配慮いただければと思います。
【辻倉副理事長】
 ありがとうございます。「もんじゅ」につきまして、このB評価をつけるにあたっては、機構内でも随分議論がございまして、悩みました。ただ、工程という観点では、現に約半年ほどおくれたということも事実でございますので、私どもなりに厳格に評価をさせていただいたところです。排気ダクトの工程につきましても、もともと昨年の秋までに行うものだったんですが、ちょうどトラブルと重なりましたので時期をずらしました。ずらすのであれば、屋外作業ですから、冬場を避けて、安全で確認できる時ということで春先を選ばせていただいたというようなことでございます。
 このあたりのことは、現場の工夫で、現地の作業等が確実にできるようにというところを第一義にして決めてきたことではございますが、ルールに基づいて自己評価をさせていただきました。今、おっしゃっていただきましたようなコメントは、ぜひ現場にも伝えさせていただきたいと思います。

戸谷理事より、資料1-4に基づき、震災の対応について説明が行われた。議論は以下の通り。
【内山部会長】
 大分いろいろなところを損傷されて大変だったと思いますが、被害額が260億円とおっしゃいましたが、それは、先ほど言った機器だけでなく建屋あるいは道路の損傷、そういったものをすべて復旧する費用でしょうか。
 そしてまた、今後、復旧にどのくらいの期間がかかるのか、その辺が少しおわかりでしたら教えていただきたい。
【戸谷理事】
 今、申し上げましたのはすべて含めたものでございまして、道路、建屋を含みます。特に旧原研の研究棟が、ある意味では、旧原研創設以来のかなり古い建物がありまして、それは当然、旧耐震の基準でやっております。旧原研ができて以来、今回が一番大きな、初めて受けた地震ということで、建屋自体が使えなくなった建物が幾つかございます。
 そういったものを含めまして、先ほどの道路関係も含めて、全体として大ざっぱに見積もるとそれぐらいになるだろうということでございます。
【内山部会長】
 その中で、その費用は、今後、どのように負担されるのか、めどはあるのでしょうか。
【戸谷理事】
 そこは、補正予算等で何とかいろいろお願いをしたいということで思っておりまして、既に第一次補正予算におきまして、比較的、原子炉等規制法なり何なりに直接かかわりそうな部分といいますか、例えば炉規制法の関係の施設で少し壁に穴があいているとか、そういう緊急的なものについては、一次補正予算で手当てをしていただいておりますけれども、それ以外の部分につきましては今後の課題ということで、国の財政状況もちょっと厳しいところがございますので、私どもとしていろいろお願いをしたいと思っておりますけれども、必ずしも見通しが立っておりません。
 それから、仮にといいますか、補正予算の時期がまたいつになるかということもございますけれども、やはり予算をいただけたとしても、例えばJ-PARCとか、あるいは3号炉とか、その辺の関係につきましては、できれば年内あるいは年度内に運転再開をしたいというふうに考えておりますけれども、それは、やはり今後、補正予算としてどこまで手当てをしていただけるか。我々の中のやりくりだけではなかなか厳しい状況にあるというのが正直なところでございます。
【内山部会長】
 メルマガで、随分、福島に対する対策あるいは緊急時のいろいろな面でのJAEAの活動を伝えており、私も高く評価したいと思っていますが、今後とも技術面あるいは施策面で、ぜひJAEAが前面に出て、いろいろな支援をお願いしたいと思っています。また、それがこの評価委員会にどうやって、評価として取り入れられるか、今後、検討していければと思っています。
【浅田委員】
 メルマガの話が出ましたけれども、私も最初にいただいたときに、こんなふうに活躍されているのがわかりやすい言葉になっていて、非常に、ある種、感動した思いがあって読ませていただきました。
 しかしながら、唯一の総合的な原子力研究の機関としてこんなに活躍されているということが、一般にはあまり認知されていないのではと思います。ときどき、防護服を着た後ろに手書きで「JAEA」と書いてあるのをテレビで見て、私は、こういうふうに出ているなと思うのですが、多分、あれは一般の方にはわからないので、出ているのかもしれないけれども、多分、そうではない反対の声のほうが非常に強くて、「無策じゃないか」とか、そういう思いで一般の人たちはいると日々感じているので、ぜひ、こういうのを一般の方たちがわかるような形で情報を提供していただきたいと思います。
 その一環として、私は、東海村の「アトムワールド」に5月末に見学にいきました。開いていたということ自体、私は安心したんですが、震災後の情報というのは何もなかったように思います。私の見方が悪かったのかもしれませんが、夫と4つの目で見たんですが、なくて残念だったと思いました。なぜ、メルマガで提供している文字情報だけでもいいから、写真だけでもいいから、震災後の情報がなかったのか。そして、受付で「何かその後の情報がありますか」と伺いましたが、「ありません」と言われました。展示では、54基の原子力発電所が「運転中」という震災前の情報がそのまま出ていました。あれでは、一般の方々はなかなかわかりにくくて、そこへ行ったとしてもわからないだろうというので、ぜひそのあたりの対応をお願いします。
【津山委員】
 復興の際に、もちろん原子力安全が第一というのは間違いないのですが、先ほど理事長がおっしゃいました財産保護の観点、特に、産業界と関係のある、例えば半導体業界などが照射でよく使っている施設が1年もとまってしまうとなると、もう外に逃げていってしまいますので、ぜひご考慮いただきたいと思っています。
【富岡委員】
 電事連ですけれども、震災発生以来、多大な支援をいただきまして、ほんとうにありがとうございます。
 実際に、私自身も、直接、理事長に電話をおかけして、すぐにマスクをくださいというようなお願いをしたりしまして、ほんとうに対応いただきありがとうございました。
 先ほどもありましたけれども、これだけ支援いただいているということを、ぜひアピールしていただいて、皆さんに認めていただけることになるといいかなと思います。これは、我々の反省でもあって、我々も、東京電力をほかの電力9社で支援しておりまして、300人ぐらい現地に常駐しているということなのですが、これもなかなか、アピールしないと世間の方にわかっていただけないところがありますので、ぜひそういったこともよろしくお願いします。
 また今後とも、日本ではJAEAでしかできないことが多々あると思いますが、ぜひ、よろしくお願いします。
【田中委員】
 機構さんの福島の支援業務、大変重要なことと思うのですが、ちょっと気になるのは、これから結構時間がかかりますし、いろいろな研究者がこちらのほうをやっていくとなると、これ以外の業務が少しおくれるという気もするのですが、その辺は、今後、どういうふうに考えていけばいいのか教えて下さい。
【戸谷理事】
 今、福島支援につきましては、先ほど立ち上げました福島支援本部、当初は16名だったのが、今はもう30名ぐらいになっています。
 それから、先ほど、申し上げましたように、機構のいろいろな組織がこことの関係の中で仕事をしていくということで、今、田中先生がご指摘のように、これまでやってきた本来の業務について、今後、この福島支援関連の業務が大きくなれば影響がでてくるものと、思っております。
 そのことについては、やはりこれは機構の経営の判断として、やはりこちらのほうを優先するということであれば、というか優先するということになろうかと思いますけれども、そういった中で、やはり今後の中期計画なり中期目標のあり方について、先ほどあまりここで先走ってという話もありましたけれども、そういうことが出てくるであろうというふうに思っております。
【鳥井部会長】
 社会から見ると、東京電力と保安院というのは一蓮托生なのです。認可した側ですから、認可した責任を問われるわけですから、一蓮托生なのです。
 そこで、今後事故がどう推移していくか、ここはこういうふうに推移すると思われるとか。そういうふうなことで、原子力の専門機関としての役割を誰が果たせるかとなると、誰なら信用できるんだという中で、原子力機構は、実際にエンジニアリングをやったわけではないし、どこまで言えるかということは疑問ですけど、もう少し顔が見えてもよかったかなという感じはします。
 多分、それについてはいろいろな抵抗もあって、なかなかできない事情もあったという気もするのですが、その辺はどうだったのでしょうか。機構として、独自に何か事故の評価みたいなものを言えたのでしょうか。
【戸谷理事】
 すごく難しいご質問で、解析といったときもいろいろな意味の解析があろうかと思いますけれども、例えば機構について申し上げますと、シビア・アクシデントについての解析するためのコードを、これまでずっと開発をしてきて、それが今回の事故の解析で直ちに使えたのかというと、実は、残念ながらデータ自体がほとんど出ていなくて、後ほど大分おくれてデータは出てきましたけれども、そこから実際の解析を始めてもなかなか間に合わないといいますか、一番最初のころの、ほんとうに事故が進展していく過程において、そういう解析の結果を生かすといったようなタイミングについては、実は全くなかったというのは事実だと思います。
 それと、先ほど理事長が、いろいろな場面で安全研究センターが貢献したというのは、事実でございまして、例えば原子力安全委員会に呼ばれたりとか、あるいは先ほどの統合本部などで東電さんなり、あるいは保安院さんから、全体の解析というよりも、場合によってはパーツ、パーツの放射線量の評価だとか、いろいろな意味での評価を依頼されて対応してきたというのはあったんじゃないかなというふうに思います。
 放射能対策について、例えば「SPEEDI」のお話とかでいろいろ言われているわけでございますけれども、ここのところについて申し上げれば、「SPEEDI」については、もう開発が終了して、これは機構の手を完全に離れて、原子力安全技術センターが運用するということになっております。ただ、そこのところについて幾つか技術的な支援をしたというのはございます。
 あと、実際に、これは機構としてというよりも、安全委員会の緊急技術助言組織の専門家として、いろいろな局面でいろいろなアドバイスといいますか、助言をしたというのは事実としてあるというふうに思っておりますけれども、これは、機構が組織としてやった活動では必ずしもないと、そういうことかなというふうには思っております。
【鳥井部会長】
 政府機関に対してのアドバイスもさることながら、国民は、だれを信じていいかわからなくなっているわけですから、国民に対するアドバイスがあってもよかったような気がしていま。
 あちこちでさんざん言われたのは、医療チームはすぐに活動して、すぐに情報を発信して、すぐに支援の体制をつくったのに、科学技術のコミュニティは何をやっているんだという批判をさんざん私も受けました。
 その中で、やっぱり国民に対してもメッセージを出すというようなことを、今後、考えていかなければならないのではないかという感じが非常に強くするのです。
【戸谷理事】
 情報の出し方についていろいろなご意見が、今、出されていますけれども、やはりかなり集約された形で出すというのが、基本的に政府の方針としてある中で、我々がどこまで言えたのかという問題はあろうかと思います。
 今後、福島支援本部を立ち上げて、福島に場合によっては事務所もつくって云々というふうに福島にどんどん入っていきますと、今後は県との直接的なパイプもできると期待しています。そういった中で、より国民あるいは住民に近いところで、もう少し目に見えた活動なり、あるいはいろいろな説明を、機構という名前の中でできるようになっていくのかなと思います。
 これまでは、先ほどご指摘もありましたけれども、どちらかというと、国がある意味では前面に出て、文部科学省が調査をしたというのは、実際には機構がやっているというのはたくさんあります。そこは、一応、国の仕事というものを、機構がある意味では代行するといったような位置づけもあります。
 今後は、もう少し活動の幅も出てくるのかなということで頑張りたいというふうには思っております。
【玉川委員】
 今度の震災で、こちらの東日本側はかなり被害を受けているのですが、幸い、福井にある「もんじゅ」のほうは離れていて大丈夫だったわけですけども、「もんじゅ」という高速炉、ナトリウム冷却の炉について、我々の周りの素人と話をしていますと、「ああいうときに水を突っ込めないから非常に危険だよね」というふうな言い方をよくされます。それに対して、私は、専門家ではないのであまり答えをできないのですが、そういうものの安全性をもっときちんとアピールできるようなことを、今後、ぜひやってもらいたいということがあります。
 もう一つ、「もんじゅ」については、ときどき私、実験なんかで利用させてもらっているのですが、そこへのアクセスというのは隧道1本で行くだけに限られていますので、地震で何かあったときの対策というものを十分考えられて、もっと、周りの住民にもアピールできるような広報活動というのを、しっかりやっていただきたいと思います。
【辻倉副理事長】
 今回の震災と「もんじゅ」の安全性という観点は、これはシビア・アクシデントの領域まで入れて、どのようなことが必要かということについては、文科省のほうからのご示唆もございましたので、機構内に専門家委員会も立ち上げて、議論をさせていただいています。
 確かにナトリウムは、安全という観点から見ると、よい点もあれば悪い点もある。私どもの思いは、きちんとナトリウムの冷却システムということについて、正しい情報をまずベースとしてお伝えすることが大事だろうと思っています。
 ナトリウムは、液体領域が非常に広い温度範囲でとれますので、水ではできないような容易な除熱も可能です。そういう原理・原則に基づいて、今の「もんじゅ」には、初期の設計段階からかなりそういう手当てが既になされている部分がたくさんございます。
 さらに、それに加えて、ナトリウムのメンテナンスということで、ナトリウムをドレンしなければいけないとか、もろもろのナトリウムがゆえの制約性もあって、そういうことに対する手当てのシステムも組み込んでございます。例えば、メーンのループは3つあるけれども、3つとも壊れたらどうするんだというお話はよくあるわけですけれども、それに対する答えは、まずは壊れないようにする。また内圧が必ずしも軽水炉のように157キロとか、あるいは80キロとかかかっているわけではなくて、ほぼ大気圧に近いような状態での循環ができるというのは、構造面の強度確保をするという観点では非常に有利であることは間違いありません。
 また、小口径の、最小容量を持ったような形での別の冷却ループも用意してあります。そんなことをきちんと開示していくことで、ご納得をいただけるものだと思っております。
 それから「もんじゅ」へのアクセスにつきましては、ご指摘のとおり、これは物理的な地形のレイアウトで、あの半島の奥まったところにあることは間違いありません。当然、緊急時には、いろいろなモードがあるわけですけれども、海からの緊急アクセスというパスは当然確立してございますが、今回のように、津波のときはどうするんだとか、もろもろの可能性をつぶしておくことが必要だろうということで、現在、最少人数を、歩いて発電所にアクセスできるようなところに確保しておくことを考えています。幸い、発電所に附属している寮ですとか、このような施設が近くにあるものですから、緊急要員はそういうところで確保する。地元では周回道路の要請等もありますが、これはこれでまた別途の議論をしていただくとして、現在の資源の中で対応可能なことについては、アクシデント・マネジメントの領域まで含めて検討を行っている、そういう状況でございます。
【内山部会長】
 単に今回の「もんじゅ」のトラブルで、それが復帰したからすぐに運転できるということは、今の状況だと結構厳しいと思います。今、ご質問があったようなことが国民に、あるいは地元にどれだけ説得できるかということで運転再開が決まってくると思いますので、今、お話ししたところによると、かなり具体的に詰めているということで、ある程度、安心しましたけど、やはり早期にそういった問題を国民にわかりやすい形で、納得されるような内容のものを出していただくことが必要になると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
【川口室長】
 先ほど、評価はどうするのかという話がありましたが、いずれにしろ、何らかの形で23年度の業務評価において、福島支援の活動も評価していただくことになります。

岡田理事から、資料1-5に基づき、平成22年度業務実績の自己評価結果について、説明が行われた。議論は以下の通り。(評価項目13、23)
【鳥井部会長】
 326人もの国外の方がいらっしゃるという話ですが、震災で壊れたとか、いろいろなことに対してどのような反応なのですか。
【岡田理事】
 国から帰還命令が出た人は帰りましたけれども、また戻ってきている人も多くいます。ただし、J-PARC等については施設が動いていませんので、そのまま戻ってこない人もいるという状況が続いております。
 ちょっと定量的にはつかんでいないんですけれども、国に帰国した人というのは帰国命令に従って戻った人が大半で、あとは、落ち着いてきたらまた戻ってきたというようなことを聞いております。
【鳥井部会長】
 動いていない施設については、「しようがないね」とか、何か言ってますか?
【岡田理事】
 特にデータなどは把握しておりません。
【内山部会長】
 これは22年度評価ですから、なかなかいろいろ活動しているという感じを、今の説明から思いました。
 ただ、今の事態から、継続性がどうなのかを考えてしまうというのは、私だけではなく、恐らくほかの人もそうではないかと思います。特に国際協力は、日本がこれまでイニシアチブをとって多々行われてきましたけど、今後、こういう事態になって、その辺の継続性はどうなっていくのだろうというところ、ある程度、見通しは得られているのでしょうか。
【岡田理事】
 これは、先ほど文科省からもご説明がありましたけど、やっぱり国の方針というのが、今後、固まってくると思います。それに従って、我々の国際協力の方針、活動等も、どういうふうにしていくか、ということを決めていかなくちゃいけないと思っています。
 今、言えることで、ファクト(事実)だけちょっと申し上げますと、去年の4月の核セキュリティ・サミットに従って、核不拡散・核セキュリティ総合支援センターを立ち上げて、アジア諸国を対象とした研修などを始めようとしております。
 今回の震災等でどうなったか、この辺はちょっと事実関係を聞いておりますのでご紹介申し上げますと、ベトナムなどいろいろな諸国に「研修をやりますけど来てもらえますか」と聞いたところ、「ぜひ行きたい」という、今回のことにかかわらず希望が、メール・ベースですけれども届いているということです。
 それに加えまして、そういった研修の際に、ぜひ今回の福島の事故について、いろいろ今後の参考にさせてほしいというようなご希望もいただいておりまして、それにこたえていかなくちゃいけないなというふうに考えております。
少し個別的な答えですが、そういった意味では、継続をしていくことができるというふうに考えております。
 また、新聞報道ですが、ベトナムとかトルコですが、日本の原発導入は別にやめないということを言っているということは、原発導入予定国に対するそういった支援と国際協力というのも、今後、続けていくことになろうと推測しております。

片山理事から、資料1-5に基づき、平成22年度業務実績の自己評価結果について、説明が行われた。議論は以下の通り。(評価項目16、25)
【山田委員】
 項目16の査読つき論文数の推移について、1,129編の論文を出されたということで、これが非常に価値があるかどうか考えさせていただくためにお伺いするのですが、この数字を、どういう条件で集計されたのでしょうか。例えば、JAEAの施設を使うけれども、JAEAではない方がJAEAの施設を使って書かれた論文というのもあるでしょうし、あるいはJAEAの研究者の方であっても、JAEAの施設とは全く関係なく、どこかへ出かけて論文を書くということもあると思うのです。ですから、いろいろなケースがあると思いますので、どういう条件でこの集計をされたかということと、もう一つ、参考までにお伺いしたいのですが、JAEAの中で博士号を持っている方が何人いらっしゃるかということもお伺いしたいと思います。
【片山理事】
 この査読つき論文について、これは機構の人間が書いたものということで整理をしています。
 それから、博士号を持った人間が何人かというのは、今、データが手元にありませんので、確認をしてご紹介をしたいと思います。
【内山部会長】
 JAEAとしては、基本的な方向として研究報告書と査読つき論文、それをどういうふうに評価しているのですか。そのどちらを重視しているのか。
 もう1点は、先ほどアクセスが、震災以降、非常に多くなったということですが、実は、私もモニタリング・データを何回もアクセスしたんですけど、その内訳は一体何なのでしょうか。多分、モニタリングかなと思ったんですが、わかったら教えてください。
【片山理事】
 まず、前段でありますが、原子力機構というのは、非常に性格の異なる研究あるいは技術集団の集合体という面もありますので、実際にサイエンスとしての査読つきの論文ということで、サイエンスのコミュニティで、世界で理解を得る、評価を得るということも極めて重要であると同時に、それなりの技術的なプロジェクト、極めて実務的ではあるかもしれないものの、プロジェクトを完遂して、その情報を公開をするということも、機構の業務として重要な柱としてございます。
 したがって、査読つき論文と研究開発の成果の報告書ということについて、どちらをどうしているのかということについては、まさに機構の業務そのものが、その両者をあわせ持って発信していくことが必要であると思っておりますので、どちらかだということではなかなか難しいということだと思っております。
 それと、2つ目のご質問のアクセスについて、東日本大震災でこれだけふえたということについて、これは詳細に分析したいと思います。私どものできがいいからこれだけふえたとはもちろん思っておりませんが、それなりにデータとして非常に重要なものがあったから、これだけのことになったと思いますので、どういう部分が一番アクセスがあったかというのは分析をしてみたいと思います。まだ手元に資料がありませんが、我々がこれから活動していく上でも大事なご指摘だと思っております。
【鳥井部会長】
 社会との関係みたいなところですが、多分、震災で一変しているのだと思います。今までと同じことをやっても全然だめだと思うので、ここの部分は、どちらかというと、やはり役所にも中期目標を少し考えてくれという話ですし、中期計画も少しきちんと考え直さないと、今までと同じことをやっていてもだめだと思っていますので、役所も含めて考えてほしいというのが私の意見であります。
 それと、ウェブとかスピードが遅いのに対してツイッターだのフェイスブックというのはべらぼうに早いです。多分、それでやられているのです。そういうことに対して、どういうふうにお考えですか。
【片山理事】
 ツイッター、フェイスブックについて、内部ではいろいろ検討しております。まだ結論は出ていないんですが、すごく炎上することもある。非常にセンシティブな問題について、正常に機能できるかどうかというのは、まだ分析し切れておりませんので、どうしたものかとは思っていますが、極めて多くの人の瞬間風速の意見あるいは見解、情報というものについては、非常に重要なものがある。我々が知らないところで、何かざわざわとしているのは何かと思ったら、ウェブではない、ツイッターでみんな情報を共有していたということもよく起こっていることなので、少し引き続き研究をする必要はあると思っております。非常に気にはしています。
【鳥井部会長】
 職員の方が、自分の見解だけで何かやるというのも危ないところはあるし、ちょっとその辺のことはしっかりとまとめて、いつか次の中期計画か何かやらないといけないかもしれないという感じはします。
【片山理事】
 ちょっと勉強させてください。
【内山部会長】
 社会や立地地域の信頼性確保ですけど、アウトプットはこうやってデータでわかるんですが、やはりアウトカム、このデータが持つ意味なのですけど、ほんとうに信頼性を回復したことに貢献していると、どう判断するのですか。
【片山理事】
 実際に社会、特にまず狭い意味での立地地域のご理解をいただいて前に進めること、これが、すべてだとは思いませんが、重要な指標の1つだとは思っております。さらにそれを数値的にどう評価するかというのはなかなか難しいところではありますが、こういうアンケートをとってどうかという矮小なことではなくて、ほんとうにプロジェクトがどうなのかという全体で評価しなければならないので、もしもなかったらどうかとか、あったらどういう効果がプラスオンされたのかという、そこの結果を抽出するということの作業が必要ですので、非常に難しいと思いますが、我々としては、立地地域の理解を得て前に進むということが大事だと、そうなるように努力をしている、そうならないのは何かというのを常に分析しながら努力しているということだと思っています。
【内山部会長】
 模索しながらやっているという感じでしょうか。
【片山理事】
 原子力の事業をする者と、立地地域の関連、関係というのは、一般論があるわけではなくて、それぞれ関連の事業者の皆さんとか、いろいろな方や機関が努力をしている、そういうものも参考にさせてはいただいていますが、それぞれの事情というのもありますので非常に難しい、勉強しているということだと思います。
【鳥井部会長】
 先ほどインプットの情報というのが今年度必要になり、後で項目別のときにというお話があったので、今回でなくて次回で結構ですから、インプット情報について、きょう評価した部分についても、ぜひお願いをしたいと思います。
【辻倉副理事長】
 本日のご説明の中できれいに整理できていない部分もありますので、整理の段階で。今後の項目につきましては、その点を留意して対応させていただきたいと思います。
【宮内委員】
 特許出願の法人としての方向性というのでしょうか、国際的な問題も考えると、特許は、守らなければならないかなり重要な財産になってくるのだろうと思います。世界的にも、かなり高い水準の研究成果が出ているのだとすると、これらを積極的にとらしめる方向で何らかの、教育とか研修をやっているということは、そういうことのあらわれなのだろうと思うのですが、その割に、結果的には新規出願は減っているという関係でいくと、この辺はいかがな関係なのでしょうか。
【片山理事】
 私ども、新規出願が減ったことは、何か問題があるということではなくて、より質の高い、大事な特許はきちんと取って、場合によっては更新をするときも節目節目に評価をして、持っている特許も、これはあまり重要じゃないと思ったのは、保持するのはやめる。質的に高いもの、そういう戦略的な特許の取り方というのが、今、一番大事なことだと思っています。
 それで「注目度」と書いてあるのは、外国出願があるとかないとか、あるいは拒絶理由通知書に引用されているとか、あるいは第三者がどのくらい閲覧しているのかとか、情報提供をしているとかしていないとか、そういう状況を十分見て、大事な特許は何なのかということを戦略的に考えてやるということが機構にとっては大事だと思っております。基本特許を取って、それだけでもう大丈夫だということではなくて、その基本特許を類似特許で殺されてしまうと、もう元も子もなくなるということなので、その基本特許に類似した、どういうあたりを押さえておくと、全体としてネットワークとして特許が守れるのかということを考えて、次に、どんな特許を取るかということも、重要な課題であり、そういう努力をしている最中だとご理解いただければと思います。
【宮内委員】
 その辺の情報が全部集約されるような部署というのが、もう存在しているわけですね。
【片山理事】
 産学連携の知財の管理というセクションが、それを専門に行うと同時に、もちろん自分たちだけで全てできるわけではないので、弁理士あるいは外部の機関にも委託調査をする。そういうものを総合的に活用して戦略を立案する、本来業務としてやっているということでございます。
【内山部会長】
 それに関連して、私も何回も、特許について話してきているところがあって、ちょっといろいろ悩みもあるのは、経産省の独法委員会に出ると、必ずこの特許のことが出てきますけれども、やはりどこの独立行政法人も、意外と特許収入は少ないのです。産総研にしても。
 どういうふうに評価すればいいのか非常に難しくて、例えば海外のこういった関連機関は、特許収入をどのくらい取っているのかとか、そういう情報があると、我々も、評価しやすいです。
 少なくとも、ぱっと見ると、年間2,000万円ですが、2,000億円くらいの予算が出るには1万分の1くらいで、数値から言うとあまりにも少ないという感覚があるんですが、こんなところに載せられるような数字ではないんじゃないかというような感じはあるんです。しかし、独法というのはそういうものだというふうな位置づけになれば、ああ、そうかと納得はいきますけど。こういうことを、我々はどう評価すればいいのかなと、非常に今の時点で、経産省の中においても難しい。まして、こちらは主管が文部科学省ですから、特許なんてどうでもいいんだという法人があるのか、その辺、ちょっとどういうふうに考えればいいのか。
【戸谷理事】
 各機関で、大体特許収入はどれくらいなのかというのは、もう既に先生方は御存じだと思うんですけれども、日本の研究機関、これは大学も含めてなんですけれども、特許収入が非常に低いというのは、これはもう否定しようもない事実で、私自身、大変反省はいたしております。
 ただ、海外の研究機関というのは、今データがないんですけれども、大学で見たとしても、特にアメリカの大学などは、特許収入が2けた違うぐらいのところがあるということで、これはやはり産業化に至るプロセスについての認識の甘さと、企業との連携の深さがどこまであるのかとか、その辺に相当差があるんじゃないかなというふうに思います。
 あと、最近になってようやっと、この特許のポートフォリオみたいな考え方、産学連携推進部にお願いをしているんですけれども、要は、強い特許を育てないとお金にならない。しかも、特許は、権利化したとしても、御存じのように企業はすぐ近いところで逃げるようなことをしますので、ある意味では、ほんとうに強い特許については、周辺を固めるということと、継続的にフォローしていかないと、ほんとうに稼げる特許として育たない。そこのところはやはりこれまで特許をどうやって管理をしていくのかという、その後段のところについての発想が日本の公的な機関にはほとんどなかったし、専門家もいなかったということで、やっぱりそちらのほうを少し育てていかないと、ほんとうに特許料収入を上げるのはむつかしいというふうに思います。
 なかなか解決策が直ちにないんですけれども、先ほどからお話が出ている特許のポートフォリオみたいな話とか、あと周辺特許をいかに固めるかとか、そちらのほうに徐々にシフトをしていって、むしろ特許の数というよりも、強い特許を育てる。そのほうが、恐らく費用対効果としていいんじゃないかと、今後、そちらのほうに向かっていきたいなと思っております。
【鳥井部会長】
 例えば原子力機構を考えたときにね、特許を取って稼ぐのが使命か、日本のエネルギーをちゃんとやるのが使命なのかということは、よく考えてほしいです。
 それで、周辺特許を押さえれば確かに強くなるんですけれども、それだけほかの人が使いにくくなるわけです。
 だから、なぜ特許を取るかという話だったら、自分たちがやろうとしていることができなくなるというシチュエーションだけは避けてほしいんです。
 波及効果としてお金が入ってくる、ああ、よかったという程度の話です。僕は、国の知財戦略が少しおかしいんだと思っているんです。
【内山部会長】
 経産省でもそういう方針なのかどうか、これは相当議論しなきゃいけない問題だと思います。
【戸谷理事】
 もう一言だけ申し上げますと、実は、機構の特許というのは、やはり、今、部会長がおっしゃられたように、波及して出てくるものが実は多くて、本筋の、例えばエネルギー開発、高速増殖炉その他について言うと、これは実用化まであまりにも時間がかかり過ぎて、特許料収入という観点から言うと、事実上、ほとんど意味がないということだと思います。
 ただ、そこはやはり実際にやったことをいかに先行的に押さえるかという観点もありますので、ある意味で防衛特許的な形で取らざるを得ないという部分もあります。そこのところは、なかなか実際の特許収入という形にはならない。
 ただ、いかに波及効果といえども、やはりそこは何がしかの収入があるんであれば、そこは可能な範囲内で漏れのないようにしたいと思っております。
【鳥井部会長】
 要するに、特許侵害を見つけ出して戦わなかったら、特許なんてもうからないです。だから、そんなことまでやるべきかという話はよく考えてほしいというところです。

戸谷理事から、資料1-5に基づき、平成22年度業務実績の自己評価結果について、説明が行われた。議論は以下の通り。(評価項目22、24)
【内山部会長】
 「産学官の連携」と書いてあるんですが、官との連携というのは、何ですか。
【戸谷理事】
 純粋な官というのは大分範囲が狭くなっていますので、なかなか難しいんですけれども、地方産業局もあります。国立大学法人、これは学ですね。
 あと、自治体ですね。そういったところが、一応、官というか公というか、そういうことかなというふうに思います。
【内山部会長】
 政府そのものとは、あまり密接な関係を持っているということではないということですか。
【玉川委員】
 福井県みたいなところが……。
【戸谷理事】
 福井県の例で申し上げれば、ここは当然、自治体も中心でやっておられますし、それからここには文部科学省、経済産業省も一緒に入ってやっております。そういう意味では、産学官と言えば産学官だと思います。
【玉川委員】
 JAEAさんには非常に協力していただいて、うちの大学も専門家が非常に乏しい状況から専攻を立ち上げた背景もありまして、JAEAさんの専門家が講師として来ていただいて教員をやっていただいているんですけど、非常に助かっております。
 今年度末には、うちの原子力の研究所のほうが敦賀へ移転しますので、また密接に、その辺の研究を進めていっていただければと思っています。
【鳥井部会長】
 第1期も、中期計画期間も含めて、大分、地域の企業との協力みたいなものも進んできたと思うんです。その辺、皆さんがどう思ってくれているのかというのを、一度、何か調査をするといいかもしれません。かつて原子力機構と関係を持った企業にどういうふうにどうだったのか、非常にちゃんと支援してくれたのか、「特許だけいいよ」と言っただけでおざなりだったとか、いろいろなのがあると思うんです。やっぱり、1回、サービスのぐあいがちょうどいいのかどうかというところは、少し調査されるといいかなという感じがします。
【片山理事】
 先ほどの宿題の件、後できちんと資料でお届けしますが、研究者、ドクターは何人かというご質問について、研究職が1,000人でございます。そのうちの700人が博士号を取得したということになっていますが、後ほどきちんとご説明します。

(2) その他
次回会合等につき、事務局より説明した。

(3) 閉会

お問い合わせ先

研究開発局原子力課

コメント

人気の投稿