原子力委員会 なれ合い体質の深刻さ

核燃料サイクルの見直しを議論している内閣府原子力委員会の在り方が問われている。

 電力会社などの推進側だけを集めた勉強会を開催し、今後の政策の選択肢を掲げた報告書の原案を事前に示していたことが明らかになった。

 福島第1原発事故を踏まえ、エネルギー政策を問い直す検証作業のさなかである。業界寄りの政策に誘導したいのではないか、と疑われても仕方ないだろう。組織の抜本改革が求められる。

 原子力委員会は1956年、原子力開発に関する国の施策を計画的に進めることを目的に設置された。5人の委員が、研究や開発・利用の基本方針の策定などを担っている。国の政策を左右する要の機関である。

 電力業界との関係が問題視されたのは、原子力委が昨年から取り組んできた核燃料サイクル政策の見直し作業だ。

 日本は全ての燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再利用する方針を掲げてきた。原子力委の小委員会は昨年から検証に着手し、ことし5月初めに(1)全量再利用(2)再利用と直接処分の併存(3)全量直接処分―の三つの選択肢を盛った報告書案を示している。

 ところが、原子力委は4月24日に、青森県六ケ所村の再処理工場を運営する日本原燃や電気事業連合会など推進側を集めて勉強会を開催し、その場で3案の内容を明らかにしていた。電力業界からは従来の再処理路線を求める強い意見が出されたとされる。

 5月の報告書案は、この勉強会を踏まえ業界に有利なように修正したのではないか。そんな疑いが持たれるのは当然だ。

 藤村修官房長官は否定したものの、「疑念を招き問題だ」と述べている。報告書は、政府の「エネルギー・環境会議」が新たな政策を論議する際の重要な資料である。誤解や不信を招くやり方は慎むのが常識だろう。

 原子力委をめぐっては、複数の事務局職員が電力会社や原子炉メーカーなど民間からの出向職員であることも判明している。

 推進派に配慮した勉強会といい、出向職員の問題といい、原子力委が依然として電力業界とのなれ合い体質にどっぷりと漬かっている印象が拭い切れない。

 国の原子力政策に深く関わってきた組織である。福島第1原発事故の責任は重い。原子力安全委員会とともに、解体的出直しをしなければ、新たなエネルギー政策への転換は難しい。

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