豊松・関電原子力事業本部長に聞く

関西電力の原子力事業本部長に6月末、本部長代理だった豊松秀己常務(56)が就任した。関電は11月に運転40年を迎える美浜原発1号機(美浜町丹生)の後継機建設や、高浜原発3、4号機(高浜町田ノ浦)でのプルサーマル計画を控えている。節目の時期のかじ取り役に対し、今後の原子力事業の展望や課題を聞いた。(高橋健太郎)
 ――事業運営の方針は
 将来への事業展開に一歩踏み出した中での本部長就任で、責任の重さをかみしめている。最も重要なのは原発の安全・安定運転。地元の信頼を得ることも同じくらい大事で、この二つが車の両輪だ。今年は(11人が死傷した)美浜3号機事故で亡くなった方々の七回忌を迎える。もう一度原点に立ち、事故の反省と対策を胸に刻んでやっていく。
 ――事故の教訓について
 (1991年に起きた)美浜2号機の蒸気発生器細管破断事故は、技術的には大きな事故だったが、機器は補修すれば元通りになる。美浜3号機事故のように、生命に影響を及ぼす事態は取り返しがつかない。二度と起こしてはならない。
 ――関電は、原子力発電などの〈非化石電源〉の比率を、現在の約5割から、2030年には6~7割に引き上げる戦略を3月に打ち出した
 (発電時に二酸化炭素を排出しない)原子力を中核に据え、「低炭素社会」の実現に貢献するという我々のメッセージだ。関電の原発が11基立地する県との関係が、さらに重要になってくる。
 ――美浜1号機はいつまで運転するのか
 (2012年に運転40年となる)美浜2号機の運転方針などを考慮する必要があり、まだ決められない。原子力や火力、水力の発電比率なども考えたうえで、来年秋頃に方針を示す。後継機の建設地は、美浜発電所とその周辺が候補。できるだけ早く、地質などの調査に着手したい。出力は100~150万キロ・ワット規模で、安全性の高い最新機を建設したい。
 ――使用済み燃料を一定期間保管する「中間貯蔵施設」の建設構想が、なかなか具体化しない
 「核燃料サイクル」は、中間貯蔵施設がないと成り立たない。県外に建設しようと、今も水面下で努力している。
 豊松秀己(とよまつ・ひでき) 1978年、京都大工学研究科原子核工学専攻修了後、関西電力に入社。原子力事業本部副事業本部長などを経て、2009年に常務。今年6月29日付で同本部長。高浜、美浜原発で計5年以上の勤務経験がある。

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