子力安全・保安院(下)「うのみ、受け身」で機能せず
「不合格の検査記録を削除しろ」。独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)の元調査役、藤原節男(63)は、上司の“改竄(かいざん)”命令に耳を疑った。
平成21年3月、完成したばかりの北海道電力泊原発3号機の運転前検査を担当した藤原は、北電が提出してきたある係数が重大事故を招きかねない値だとして、検査結果を不合格と判定した。だが、上司はそれにクレームをつけたのだ。
不合格になれば、検査を発注した原子力安全・保安院側に再検査のための余分な支出が生じる。なによりも、「不合格」という記録が残ると、反原発団体などから格好の批判対象にされかねない。
結局、藤原の抗議で記録は残され、再検査では「条件付き合格」との形が取られたが、藤原は今も組織への不信をぬぐえない。「保安院の意向をうかがい、ほころびが見えないように隠そうとしたのだろう」
保安院から原子力施設の検査業務を受託するJNESは15年、同様の業務をしていた財団法人発電設備技術検査協会など3団体の原発規制部門をまとめた形で発足した。国家公務員の定数削減の流れの中、保安院自体が高度な専門知識を持つ人材を抱えることには限界があった。そのサポート組織とされたJNESだが、実態はお粗末だった。
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