フランスの「核融合」、大統領が思うより困難
フランスは、いくつものすばらしい国営企業を作り出してきた長い歴史を持つ。現在サルコジ大統領が目指しているのは強力な原子力関連企業の創設だ。
同国は、向こう20年の原発建設が世界全体で250基、総投資額1兆ドル(85兆8800億円)以上とみている。しかし、この市場を支配するのは大統領が思うより難しいかもしれない。
確かに、フランスは原子力市場で有利なスタートを切っている。国が85%を保有するエレクトリシテ・ド・フランスは世界最大の原発オペレーターだ。運営する58基の原発は国内の発電の80%前後を担う。一方、国有原子炉メーカーのアレバは原子力技術の供給で市場をけん引する存在。サルコジ大統領は両社が戦略的提携を結び、アレバに対するフランス電力公社(EDF)の出資比率が2.4%に拡大するよう望んでいる。
しかし、これによって解決できる以上の問題が浮上する恐れがある。EDFと競合する海外公益会社は、同社が得る収益の比率が大幅に拡大するとなれば、アレバからの技術購入に二の足を踏む可能性がある。アレバは、自前の原発を持つ公益会社が需要の80%を占めると見込むが、こうした公益会社が欲しいのは新しい技術だけで、オペレーターとしてのEDFの専門技術ではないかもしれない。
その上、フランスの原子力関連の成績はこのところ惨たんたるもので、出資比率がどうであれ受注に苦戦することも考えられる。アレバがフィンランドで建設中の新世代原発は予定より何年も遅れている上、予算を80%近くオーバー。同社の同じ技術を使ったEDFのフランス国内の新たな原発でも遅れが出ている。昨年のアブダビの原発建設入札では、EDFがフランスの企業連合に加わったのが土壇場だったこともあり、韓国に契約を持っていかれた。
ほかにもある。アレバがフィンランドで建設中でアブダビに売り込もうとした主力製品、欧州加圧水型炉(EPR)は、複雑で費用がかさむ上、顧客によっては大きすぎる。また、同社はEDFと競合するドイツのエーオンや三菱重工業と組んで小さめの原子炉を開発しようとしているが、この試みはEDFとの戦略的提携の影響を受ける恐れがある。「核融合」は簡単ではない。
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