ロシア、21日にイラン原発に核燃料を搬入―米政府も容認
ロシア政府はこのほど、イランのブシェール原子力発電所に対し、8月21日に核燃料搬入を開始すると発表した。イランが原子力発電所を稼働させる最終的なステップになる。
オバマ政権は、従来ブシェール原発に対するロシアの役割に批判的だったが、13日、ロシアの立場をおおむね支持した。これは、イランの核兵器保有を阻止する米政府の努力の一環になるという。
米政府高官は、ホワイトハウスは過去数カ月のうちにロシアによるブシェール原発への核燃料搬入に同意したと述べ、米側の同意は国連安全保障理事会の対イラン制裁措置第4弾に対するロシアの支持取り付けに必要だったと語った。同制裁措置は6月に安保理で可決された。
同高官は、ブシェール原発の稼働開始はイランを国際的に孤立させるという点では不利になるのを認めた。しかし同時に、稼働しても核拡散リスクはないと強調。そればかりか、民生用の発電所稼働のため核燃料を自国で生産する必要があるとのイランの主張にかえって反論できると指摘した。
ロシアとイランの合意では、ロシアはブシェール原発を稼働させるのに必要な低濃縮ウラン燃料をすべて提供する。またロシアは同原子炉から使用済み核燃料を抜き出し、イラン国外に搬出する責任を負う。米当局者によれば、こうしたセーフガードは、国連の核査察機関である国際原子力機関(IAEA)によって実施される査察と相まって、ブシェール原発が軍事目的に転用されないことを保証するという。
ホワイトハウスのギブズ報道官は、「(ブシェール原発は)イランの意図が、彼らの主張通り、平和的な核利用であるならば、自前の濃縮能力を必要としないことを浮き彫りにしている」と述べた。
ただし、ブシェール原発に対するホワイトハウスの前向きの反応にもかかわらず、一部の核拡散防止専門家は、今回の動きはイランの核保有能力を拡大させるもので危険だとみている。原子炉から出される大量の核分裂性物質を追跡する監視行動が困難だとみているからだ。また、ロシアは従来、米国の利害を保護しない行動をしばしばとったという事実もあると懸念している。
ロシアがブシェール原発稼働の約束を実行すれば、イランは原子力発電所を保有するという40年間にわたる悲願を達成することになる。1970年代、イランのパーレビ国王(当時)は米国や欧州の企業の協力を得てブシェールで原発を建設する計画に着手。1979年に国王が放逐されると、イランのイスラム主義政府は1995年、ロシアの企業と契約を結び、ブシェールに原発建設を続行する計画を立てた。
ロシアは近年、ブシェール原発を稼働させると繰り返し表明したが、同時に繰り返し撤回してきた。ブッシュ、オバマ両政権は、ロシアがこの原発を利用して、国際社会との核交渉でイランに対する影響力を維持しようと企てていると考えていた。
しかし米政府当局は核不拡散の観点から、最も害の少ない対応を模索。最終的にはブシェール原発を阻止するよりもイラン制裁でロシアの支持を取り付けたほうがよい、との判断を下した。
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