【大飯原発、地表ずれる可能性】 「早急に現地調査を」 専門家指摘


再稼働問題で注目される関西電力大飯原発(福井県)で、敷地内を走る軟弱な断層(破砕帯)が近くの活断層と連動して動き、地表がずれる可能性があるとの分析結果を渡辺満久東洋大教授(変動地形学)と鈴木康弘名古屋大教授(同)が6日まとめた。渡辺教授は「原子炉直下を通る破砕帯もあり、早急に現地調査すべきだ」としている。
 原子炉直下の破砕帯が動いて地表がずれると、安全上重要な設備を損傷させる恐れがあるため、原発の立地場所として不適格となる可能性もある。
 経済産業省原子力安全・保安院は「既に専門家会議で破砕帯の活動性はないと評価済みだ」としているが、専門家会議委員で産業技術総合研究所の杉山雄一主幹研究員は「大飯原発など若狭湾の原発は、現地調査であらためて状態を確認するべきだ」としている。
 渡辺教授らが指摘したのは「F―6断層」と呼ばれる破砕帯。
 1985年に関電が国に提出した大飯3、4号機の増設申請書によると、F―6断層は1、2号機と3、4号機の間の地下をほぼ南北に走っている。
 当時の掘削調査で、坑内の南側壁面では断層の上を覆う地層が変形していないことなどから、関電は「国が原発の建設時に考慮するよう定めている、13万~12万年前以降に活動した活断層ではない」と判断。保安院も2010年に妥当と評価した。
 これに対し、渡辺教授らは、同じ坑内の北側壁面の調査データなどを分析し、F―6断層が地層を上下にずらした可能性があると指摘した。
 また、断層は粘土が混じって固まっていない可能性がある上、上部を覆う地層の年代も特定できておらず、活動が比較的新しい可能性もあると判断した。
 さらに、F―6断層は海域などにある周辺の活断層と連動して動く可能性もあるという。
 日本原子力発電敦賀原発(福井県)では、原子炉直下の破砕帯が動く可能性が4月、保安院の現地調査で判明。国の基準を満たさず、廃炉の可能性が浮上している。
◎全原発で破砕帯調査を 
 【解説】原発の安全審査でこれまで国は、地震の揺れによる影響を重視してきたが、地表にずれを生じさせる破砕帯には注目せず、十分な調査も求めてこなかった。最近になって日本原子力発電敦賀原発で原子炉直下の破砕帯が動く可能性が判明しており、最新の知見に照らして全原発で破砕帯の調査をするべきだ。
 大飯原発では1970年代の1号機建設の際、敷地内で多くの破砕帯が見つかり、関西電力は「F―6断層」を避けて原子炉を設置した。破砕帯は、断層活動で砕かれた岩石などが帯状に連なり、福井県の若狭湾周辺にある原発では敷地内に多く存在する。
 敦賀原発では「ずれ方の特徴から古い時代の断層」「断層を覆う新しい時代の地層が変形していないので活動性はない」などとする日本原電の評価が妥当とされてきた。原子力安全・保安院の現地調査で評価が覆る可能性が出ているが、関電が大飯原発で行った調査や評価手法もほぼ同じ方法だ。
 保安院がF―6断層を安全とする根拠も、基本的には80年代の掘削調査データなどで、古さは否めない。
 保安院の専門家会議委員を務める産業技術総合研究所の杉山雄一(すぎやま・ゆういち)主幹研究員は「国の安全審査では事業者の調査データのすべてを確認しきれてはいない。全データの再確認や現地調査が非常に重要だ」と訴えている。
◎考慮すべき断層はない 
  関西電力の話 大飯原発建設前の調査で破砕帯を確認しているが、破砕帯はいずれも非常に短いものだった。最も長いF―6断層については掘削調査などを行っている。その結果、地表をずらす破砕帯も含め、考慮すべき断層は敷地内にはないと考えている。国の耐震安全性確認の審議でも確認していただいている。

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