原子力損害賠償の国際条約を急ぐ米国、日本に支持を要請
茂木経済産業大臣とモニーツ米国エネルギー長官がワシントンDCで会談後に共同声明を発表した。中核のテーマは「エネルギー安全保障」で、懸案になっている原子力損害賠償に関する国際条約の推進を含めて、2国間の協力関係を強化していく方針を明らかにした。
福島第一原子力発電所の事故を受けて、損害賠償の問題が国際的にもクローズアップされている。現時点で原子力損害賠償に関する国際条約としては、「パリ条約」(1968年発効、2004年改正)と「ウイーン条約」(1977年発効、2003年改正)の2つがあるが、日本と米国はいずれも締結していない。
米国は新たに「CSC(Convention on Supplementary Compensation for Nuclear Damage、原子力損害の補完的補償に関する条約)」を推進しているものの、これまで米国のほかにアルゼンチン、モロッコ、ルーマニアの4カ国しか締結していない(図1)。国際条約として発効するために必要な5カ国に達していない状況で、日本が締結すれば発効条件が満たされる。会見の中でモニーツ長官は「CSCを12カ月以内に発効する」という米国の目標を実現するために日本の支持を要請した。
CSCを含めて3つの国際条約は、原子力発電所などの事故によって被害が国境を超えて拡大した場合を想定したものである。それぞれの条約には事故発生国が負うべき賠償責任限度額に違いがあるほか、条約に加わっていない国で起きた事故や巨大な自然災害による事故を対象に含めるかどうかでも違いがある。
米国が推進するCSCでは、賠償責任限度額を超える分は締結国間で分担する方式をとる一方、非締結国で起きた事故は対象から除外し、異常に巨大な天変地異の場合も賠償の対象にならない。これから原子力発電所を数多く海外に輸出したい米国や日本に有利な内容と言える。ただし日本には巨額の分担金を支払う可能性が生じる。
日米両国は2013年内に「民生用原子力協力に関する日米二国間委員会」を開催する予定で、その場でCSCの締結に関しても具体的な話し合いを進める見通しだ。米国からの圧力を受けて、日本は原子力発電から逃れられない状況が強まりつつある。
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