アトミック・アンヌはなぜ去った 仏原子力大手アレバCEO退任の裏側


フランスの原子力大手アレバのアンヌ・ロベルジョン最高経営責任者(CEO)(51)が6月30日付で退任する。
 本人は続投を切望し、「アトミック・アンヌ」の別称で国際的な知名度もありながらの退陣の影には、サルコジ大統領との不仲や“政敵”による包囲網があったとの指摘がある。
 ロベルジョン氏退任を6月中旬に発表したのはフィヨン首相。政府はアレバの株式約90%を所有する大株主だが、続投反対の筆頭は大統領とされる。3月末に大統領が東日本大震災への支援を表明するため訪日した同時期に、同氏も技術者を伴って訪日したが、大統領の拒否にあって東京での面会も実現しなかった。
 大統領は2007年の就任時に、左派人脈も入閣させる「開放政策」を実施。ミッテラン社会党政権時代に主要国首脳会議のシェルパ(個人代表)を務めた同氏にも入閣を打診したが、拒否されたのが不仲の始まりとされる。
 同氏は最難関校の高等師範学校とパリ国立高等鉱業学校出身。1999年に核燃料製造大手コジェマCEO、2001年に同社と原子炉製造大手フラマトムが合併してアレバに改名した際にCEOに就任した。
 電力需要の8割近くを原発に依存する「原発大国フランス」の看板を背負って中国、インドなど世界に原発を売り込み、「アトミック・アンヌ」の異名も献上された。「世界最強の女性の8位」(米フォーブス誌、2006年)と国際的な評価も高かった。
 一方で、大統領にも近い政財界の権力者に敵が多い。仏電力公社のプログリオ会長や仏輸送大手アルストムのクロン会長、仏建設・通信大手ブイグのブイグ会長、ゲアン内相らだ。
 ロベルジョン氏は第3世代原子炉「欧州加圧水型炉(EPR)」の広告塔も務めたが、受注したフィンランドで建設費用が膨らみ、完成が遅れた責任を問われるなど、海外戦略をめぐる大統領周辺との軋轢(あつれき)もあったという。
 大統領は半年前から後任探しを開始したとされるが結局、「原子力技術に精通」し、福島第1原発事故後の必須条件を満たすとして、アレバNO2のウルセル氏(51)に決まった。
 ロベルジョン氏は退任決定後、大統領と会談したが笑顔で退出。退職金200万ユーロ(約2億2800万円)を提示されたからという説がある。

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