インド・豪州、原子力協定締結で合意 首脳会談

インドを訪問中のオーストラリアのアボット首相は5日夜、首都ニューデリーでモディ首相と会談し、原子力協定を締結することで合意した。原子力発電の燃料であるウランについて豪州からインドへの輸出に道を開く。電力不足が深刻なインドは原発開発を推進し、豪州はウランの有望な売り込み先と見定める。
 豪州は世界最大規模のウランの埋蔵量を持つ。核拡散防止条約(NPT)非加盟国のインドと豪州の貿易が始まれば、日本を含めて世界の原発外交やビジネスにも影響しそうだ。
 原子力協定は原子力関連の燃料の輸出入や技術移転に関する2国間協定だ。アボット氏は「ウランを輸出する用意はできている」とし、協定に意欲を示してきた。先のモディ氏と安倍晋三首相との会談でも、日印原子力協定の締結に向け交渉の加速で合意した。
 インドは電力供給が需要を1割も下回る一方、人口増加で需要は着実に伸びる見通しだ。モディ政権は原発による電力供給を重要視している。
 インドでは現在、20基の原発が稼働する。2030年代前半までにさらに50基程度を稼働させ、原発の設備容量を現在の10倍超に上げる方針だ。同国の総発電量に占める原発の比率は3%強にすぎないが、2桁台に引き上げる考えだ。
 燃料の調達には不安を抱える。NPTに加盟していないインドは歴史的に自国で産出するトリウムを使ったシステムの構築を進めてきたが、ウランの需要も広がり、備蓄量の不足が懸念される。現在はウランをロシアやフランスなどから輸入している。新たに豪州から輸入できれば、安定した調達が見込める。
 インドには原発の設備の供給者に厳格な「製造者責任」を求める原子力損害賠償法があり、企業進出の壁となってきた。足元では軟化する兆しもある。
 豪州にとってはNPT非加盟国へのウラン輸出は初めてとなる。中国の台頭をにらみ、インドとの安全保障上の関係を強める狙いもある。アボット氏には英豪資源大手リオ・ティントなど30社超の企業首脳も同行した。
 印豪の首脳間の合意とは別に、両国内には原発開発の加速と、それにつながる資源輸出に反対論も根強い。豪州野党の「緑の党」は4日、「インドは民間の電力用にウランを使うとしているが、安全管理水準は高くない」と輸出に反対する声明を出した。
 インドでは12年に北西部で原発事故が発生し、作業員が被爆した。原発建設を予定する地域の住民の反対運動も目立つ。原子力協定を最終的に結ぶには、原発の安全管理の強化が前提となる。

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