原子力輸出に本腰入れる中国 江沢民の子息が研究主導

「中国の夢」とは、習近平国家主席が就任以来、ことあるごとに強調しているスローガンだが、今年3月の両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)期間中、11人の政治協商会議委員が連名で「『華龍一号』の輸出推進を加速し、原子力発電強国の夢を早期に実現する」ことを提案した。「華龍一号」は、中国を代表する原子力事業者、中核集団と広核集団がそれぞれ開発していた第3世代PWR(加圧水型炉)の設計を統合したものだ。
 一方で、「AP1000」の国産化を担当している国家核電と中国電力投資集団公司(中電投)の「合作」が浮上してきた。中核集団、広核集団のようにブランド技術をもたない中電投と、技術はもつものの発電所運転のノウハウがない国家核電を一緒にしようというものだ。

小型炉の開発にも意欲的

中国の3大原子力事業者
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 中国は、大型PWRだけでなく、モジュール方式の小型炉(SMR)の開発にも意欲的だ。中核集団が国内だけでなく輸出向けとして開発している「ACP100」(PWR、10万kW)の実証炉の建設が福建省莆田市で来年にもスタートする。福建省の漳州市では古雷石油化学産業パークに50億元をかけて2基の「ACP100」を建設し、電力や熱の供給だけでなく海水淡水化にも利用する。
 中核集団は、地元政府との協議のもと「ACP100」を江西省や甘粛省にも建設する計画だ。このうち甘粛省の蘭州市政府とは「ACP100」を用いた原子力熱供給プロジェクトを共同で進めており、2基の「ACP100」で構成された熱供給プラントを同市の安寧区に建設し1200万~1400万平方メートルに熱を供給する。
 「ACP100」には洋上浮動式の「ACP100S」(10万kW)もあり、海上での電力や熱、蒸気の供給のほか海水淡水化等に利用される。原子力砕氷船向けの原子炉開発もスタートした。
 SMRに分類される高温ガス炉(HTGR)実証炉(10万kWモジュール2基)は2017年に完成の予定だ。中国はHTGRを国の重大プロジェクトとして位置付けて開発を進めている。実証炉に続く計画も、福建省や江西省で続々と明らかになっている。このうち福建省では60万kWのHTGRが建設される。
中国は当然、SMRの輸出を視野に入れているが、これらの炉に続く有望炉として位置付けているのがトリウム溶融塩炉だ。トリウム資源が豊富な中国にとって、トリウムが利用できれば、ウラン確保の制約を免れることができる。
 中国がトリウム溶融塩炉にどのくらい本気かは、予算と人員からも分かる。予算についてはほとんど公表されていないが、17年に完成が予定されている溶融塩炉実験炉には3億5000万ドルがついているという情報もある。
 人員は、現在500人程度とみられているが、溶融塩炉の「コールド基地」と指定されている上海市嘉定区では22年までに1900人規模、「ホット基地」と指定されている江蘇省大豊市では1300人規模まで拡大することを見込んでいる。ちなみに、日本のHTGR研究・技術者の数はメーカーも含めてわずか150~200人程度である。
 中国は溶融塩炉の開発を米国(エネルギー省)と組んで進めており、すでに米国の研究者が中国の溶融塩炉プロジェクトに参加している。中国側の責任者は、江沢民元国家主席の子息、江綿恒・中国科学院上海分院長だ。
 中国は原子力産業を「戦略性新興産業」と位置付け、国をあげてバックアップしている。中国が日本を追い越すのもそう遠くないだろう。すでに追い越されているという指摘もある。

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