富士通が最新鋭スパコンで納入遅延、原子力機構に違約金3億円支払いへ

富士通が2014年12月末までに日本原子力研究開発機構(JAEA)に納入する予定だったスパコン「Post-FX10(仮称)」の契約が、納入遅延のため解除されていたことが、日経コンピュータの取材で明らかになった。富士通はJAEAのスパコン調達案件を2014年3月に落札、4年間のリースでJAEAが富士通に約30億円を支払う契約を結んだ。富士通は違約金として、契約金額の1割に当たる約3億円をJAEAに支払う。
 JAEAの広報によれば、富士通から「2015年1月の期限までに納入することが困難」との説明があり、先週末までに契約を解除したという。JAEAはスパコンの再入札を行う考えだ。

遅延の理由はプロセッサの歩留まり

 富士通は、契約解除に至った理由について「製造上の問題で Post-FX10向けプロセッサの歩留まりを向上できず、必要な量のチップの製造が間に合わなくなったため」(富士通広報)とする。既に問題の解決にはメドが立っているが、納期に間に合わないのが確実になったため、契約の規定に基づいて解約に至ったという。
 Post-FX10は、理化学研究所のスパコン「京」の商用版として富士通が開発した「PRIMEHPC FX10」の後継機である(ITpro関連記事:富士通がスパコン次世代機の詳細を公表)。国家プロジェクトとして2020年に稼働させる予定の「ポスト京」も、京と同じく理化学研究所と富士通が共同で設計することが決まっており、Post-FX10のアーキテクチャーがその原型になる可能性がある。
 富士通はPost-FX10向けのプロセッサ「SPARC64 XIfx」の製造を台湾TSMCに委託しており、富士通は2014年春の段階で試作チップの納入を受けてテスト機を稼働させている。同チップは最新の20nmプロセスで製造するが、プロセスの適用に際して何らかの問題が発生し、計画通りに歩留まりを高められなかったもようだ。現行機であるFX10のプロセッサ「SPARC64 IXfx」の製造委託先も同じくTSMCで、このときのプロセスは40nmだった。
 JAEAと同じくPost-FX10を導入する宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2015年4月、2016年4月の2段階でPost-FX10を導入、稼働させる計画について「現時点で特段の変更はない」(JAXA広報)としている。

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