川内原発、秋以降に動くの?

 国内のすべての原子力発電所(げんしりょくはつでんしょ)が止まっているなか、鹿児島県(かごしまけん)にある九州電力川内(きゅうしゅうでんりょくせんだい)原発が、秋以降に再(ふたた)び運転(うんてん)を始めることになりそうです。東京電力福島(ふくしま)第一原発の事故をふまえてつくった安全対策(あんぜんたいさく)の決まりを満(み)たすかどうか、国が審査(しんさ)していました。どんな内容(ないよう)なのでしょうか。
 ■地震・津波対策、新基準クリア
 2011年3月の東日本大震災(ひがしにほんだいしんさい)で、福島第一原発は大事故を起こした。地震(じしん)や津波(つなみ)ですべての電源(でんげん)が使えなくなり、原子炉(げんしろ)を冷やすための電動(でんどう)のポンプも動かせない。原子炉が熱(あつ)くなりすぎて中にある核燃料(かくねんりょう)が溶(と)け落(お)ちてしまった。さらに、原子炉から出てきた水素(すいそ)が爆発(ばくはつ)して建物(たてもの)が壊(こわ)れ、人の健康(けんこう)に悪い影響(えいきょう)がある放射性物質(ほうしゃせいぶっしつ)が外にたくさん飛(と)びちった。
 福島のような事故を二度と起こさないよう、13年7月に国の新しい決まり「規制基準(きせいきじゅん)」ができた。事故の反省(はんせい)から、地震や津波への備(そな)えや、事故が起きたときの対策(たいさく)を厳(きび)しくした。この基準を満たさないと電力会社は原発を動かせず、今はすべての原発が止まったままだ。
 満たすかどうかを審査でチェックするのが国の原子力規制委員会(いいんかい)だ。12年9月、原発を動かそうとする立場(たちば)の役所(やくしょ)から切り離す形で新しくできた。
 九電は川内原発を再び動かす「再稼働(さいかどう)」に向けて、新しい決まりができると同時に、規制委員会に審査を申(もう)し込(こ)んだ。
 川内原発では、もともとある電源やポンプが大事故で使えなくなったときのため、予備(よび)になる発電機車やポンプ車を津波が届(とど)かない高台(たかだい)にいくつも置(お)いた。水素爆発を防(ふせ)ぐ装置(そうち)も備(そな)えた。事故の時に対策を考える場所をつくり、だれがどんな順序(じゅんじょ)で動くかも細かく決めた。
 なかでも審査の焦点(しょうてん)になるのは、どんな地震や津波を考えて対策するかだ。川内原発は、設備をゆれに強くし、出入り口から中に水が入らないようなつくりにした。ただ、大きな地震や津波を考えるほど、対策の工事に時間とお金がかかる。どの電力会社もなるべく小さく出そうとするが、小さすぎると規制委員会に認(みと)めてもらえない。
 同じ時期に申請(しんせい)した原発はほかに五つあった。川内原発は、規制委員会に言われたとおりに地震のゆれや津波の高さを見つもったため、審査がほかの原発より早く進んだ。7月16日、川内原発は規制基準を満たすと認める審査結果(けっか)がまとまった。
 ■避難計画、地元に不安も
 審査結果がまとまったのは初めてだ。でも、これだけで原発を動かすことはできない。
 規制委員会は30日間、内容について一般(いっぱん)の人たちから意見(いけん)を募(つの)っている。その意見をふまえる手続(てつづ)きが残っている。新しく設けた施設や装置が問題ないかどうかの検査(けんさ)にも、合格(ごうかく)しなければならない。
 さらに、川内原発がある鹿児島県や薩摩川内(さつませんだい)市から「動かしてもいいですよ」という返事(へんじ)をもらわないといけない。これらの手続きが進むと、秋から冬にかけて再び動かせるようになる可能性(かのうせい)がある。
 ただ、審査を通っても、大きな事故が起きないとは言いきれない。規制委員会の田中俊一(たなかしゅんいち)委員長も「安全だということは申し上げません」と話している。
 もし原発を動かして事故が起きれば、周(まわ)りに住む人たちは福島の事故の時のように避難(ひなん)しなければならない。どうやって避難するかの計画(けいかく)は県などの自治体(じちたい)が作り、規制委員会は審査しない。住民からは「本当に計画どおりにできるのか」といった不安(ふあん)の声もあがっている。
 川内原発のほかにも、これまでに11の原発が規制委員会に審査を申し込んだ。審査が進みそうなのはいずれも福島第一原発とは違うタイプの原発で、関西電力高浜(たかはま)原発(福井〈ふくい〉県)、九電玄海(げんかい)原発(佐賀〈さが〉県)などがある。第一原発と同じタイプの東京電力柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発(新潟〈にいがた〉県)など6原発は事故時に使う新たな設備も必要で、結果がまとまるまでには時間がかかりそうだ。

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