道の原子力防災計画 見直し本格化


■重点地域 拡大を検討
 福島第一原発のような大規模事故にどう備えるか――。北海道電力泊原発の事故に備えた道の原子力防災計画を一から見直すため、課題を洗い出す作業が本格化してきた。道は8日、防災体制や避難計画など44項目の課題を有識者専門委員会に報告。防災対策重点地域(EPZ)の拡大や、事故の長期化を見据えた防災訓練の必要性を議論した。
■道 専門委に課題報告
 道は1986年に計画を作り、周辺住民の避難方法や放射線の防護策を定めた。だが、福島のような大規模事故は想定外で、道は見直しに向け、有識者専門委を作って課題の洗い出しを進めている。
 浮かび上がった大きな課題が、EPZの範囲だ。道は国の原子力防災指針に基づき、泊原発から10キロ圏内の泊村、共和町、岩内町、神恵内村と定めているが、範囲の拡大を検討する。
 福島の事故では、半径20キロ圏内に避難指示が出され、半径20~30キロ圏内の住民は屋内退避を求められたためだ。北大大学院の加藤千恵次准教授(核医学)は「泊村は福島と違い、周辺に山がある。同心円ではなく、地形に応じて合理的にEPZを定めるべきだ」と指摘した。
 事故の広域化に備え、緊急時の拠点施設をEPZ外に移設することも課題だ。大気や土壌の放射線量を監視する道原子力環境センターは、泊原発から直線で2キロ。緊急時の被曝(ひばく)医療拠点となる岩内保健所は6・5キロしか離れていない。
 今の計画では、両施設の被災や移転を想定しておらず、代わりの施設を指定することも検討する。
 計画に基づく訓練の課題も拾い出された。今は避難区域を原発の半径2~3キロに設定し、市町村をまたぐ避難や自主避難の訓練はしてこなかった。北大大学院の山崎孝治教授(気象学)は「事故が長期化すれば、屋内退避を続けるのは難しい。食料備蓄など外に逃げることを想定した計画や訓練が必要だ」と指摘した。
 専門委は11月中旬までに課題の抽出を終え、報告書をまとめる。一方、国もEPZの範囲を左右する原子力防災指針の見直しを決めている。道は専門委の報告書や国の方針も踏まえ、計画の見直しに着手する。

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