原子力安全庁:実行力は未知数 環境省内にも戸惑い


東京電力福島第1原発の事故を受け、原子力規制体制を抜本的に見直す新機関「原子力安全庁(仮称)」が、環境省の外局として設置されることが11日決まった。原発を推進する経済産業省に安全規制官庁が属する長年のゆがみが解消される一方、霞が関では規模が小さな環境省の実行力や調整力には未知数の部分もある。
 民主党の決定を受け、環境省には「心情的には反原発の職員が多い」「省内に原子力の専門家はほとんどいない」など戸惑いが広がった。環境省の職員は1258人(今年度)、予算規模も約2000億円にすぎない。原子力安全庁には、経産省原子力安全・保安院や内閣府原子力安全委員会などから約500人規模で加わるとみられ、「原子力ムラという独特の体質の集団でもあり、一つの組織として融合するには、10年単位で時間がかかる。組織のバランスが崩れるのではないか」と心配する声があがる。
 環境省はこれまで規制官庁として、公害問題などで「他省庁に嫌われる政府内野党の役割を果たしてきた」(幹部)自負を持つが、人員面、予算面から政府内の立場が強いとはいえず、他省庁との折衝で妥協を余儀なくされる場面も多かった。
 また、現在は原発の専門家がほとんどいないうえ、大事件や事故発生時の緊急対応の経験が少ないことも弱みだ。
 原発規制を統合した「新・環境省」が、こうした経緯や懸念を乗り越えられるかが、新機関の成否を握る。城山英明・東大教授(行政学)は、安全庁の位置づけについて、「金融庁、消費者庁のように問題が起こるたび、内閣府に外局が設けられてきた。さらに新たな機能が加わるとごった煮状態となり、内閣府自体のコントロールが難しくなる。環境省は新たに大臣を置く必要がなく、指揮・管理が比較的しっかりしている。一方、環境省も温暖化防止のツールとして原子力を利用してきた側面があり、必ずしも推進側から切り離されたとは言い切れない」と話す。

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